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あやしく意味不明のダークファンタジー&SF。 一応健全(?)

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さみどりのきぬ

32.jpg


目に見えず、それでも触れてくるのは風ばかりではないのかもしれない。
まだわかい牝のねこが、そのかわいいさかりに死んでしばらくしてからふと、あしもとになにかが触れてくるのを感じたことがある。また、跫音とはとてもよべないひそやかな…なんといえばよいのだろう…そこに無音をおいてゆくような…そう、ふるえるものをそのやわらかな足の裏でそっとおさえてゆくようなそんな跫音を聞いた気がするときもあって。

彼女はかすかに灰色をおびていたけれど、ほとんど純白の猫だったから、初夏の淡い翠のころ、庭の樹木の反射がさし込むとき、彼女は植物めいた紗緑にみえるのだった

わたしのうちに巣くっていた一種の罪は、わたしのたましいに及び、なにか希薄だけれどわたしから漂う瘴気のようなものを周囲にひろげて、わたしの身につけていた銀はくろく錆び、室内に置いていた植物は衰弱するように枯れてゆくのだった。

だから彼女の突然の死も、わたしのそのような病にかかわっていたのかもしれない

ふたたび春が来て、早朝の、むしろその冷たさのなかに、どうしようもなく季節が解きほぐされてゆくような衰退感のなかで、終わってしまった幾つものことをおもいだすともなくおもいだしているときに、いつものように閉ざしたままでいる窓にかけられた紗のカーテンが、ゆるやかにゆれているようにみえた。

なにかがそこに触れているように

おもわず
「キヌ…」
と彼女の名を呼んだ。
そのカーテンにやわらかく触れていたものは、そこをはなれてわたしのほうに寄ってきたようだった。
でも、手をさしのべたけれど、その気配はそこで立ち止まって、もうそれ以上近づいてこようとはしなかった。

どれほど、そうしていたのだろう。

永遠、というものがあるとするならばむしろ、一瞬のうちに[http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8F%E3%82%8A%E3%81%93%E3%81%BF%E7%90%86%E8%AB%96 くりこまれる]のかもしれない。そこに状態としてあったわたしが、無限のなかに発散してゆく、そのような遷移として

ふいに、わたしのなかに何かが宿った。わたしを死にいたらせるいのちが…でも、それは喜びでもあった。

わたしは窓に歩き、重いブロンズ色の窓枠の硝子窓をひらいた。

冬の風と、未生の春であるなにかが吹き抜けていった。

街にでよう

そういま わたしは思っている
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  1. 2006/11/07(火) 18:11:48|
  2. ダークファンタジー
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青い月

その街は、地下街の大規模な工事が始まっていた。
その深夜、皎々と人工の光が深く続く地下に満ちて、でも工事現場にいるはずの人の姿はどこにもなかった。

たしか、伯父の子がこの近くでバーをひらいていたはずだということを思い出して、つぎの角を右にまがった。

さすがに驚いたのは、その一帯が解体されはじめていて、そのバーもなかば削られて、カウンターが見えていた。
そのなかでシェーカーをふっているバーテンダーが伯父の子だった。

「たいへんなことになってますね」というと

…ええ
その若い男は
「工事現場のクレーンが倒れてきて、あやうくあっちにゆくところでした」と苦笑した

あっちとは、あの世のことだろう

…わたしは「なにかカクテルを」と言った

「今夜は満月だから、ブルームーンはいかがですか」
「うん、それで」

カウンターのすみに、少女のように若い女が、ひだりあしを揺らせながら、ドーナツを囓っていた。
目の前には大振りのグラスに入れられた、あわい琥珀色のカクテルを飲んでいた。それは微かに黄緑の蛍光を放っているように思えた

3杯目のブルームーンが、グラスの底のひとしずくになったとき、わたしはどこまで深いかわからない地下工事現場を覆う鉄板と鉄板のあいだにそれをそそいだ。

その透明で薄青い滴は、ゆっくりと揺れながらおちてゆき、やがて見えなくなった。

ふとふりむくと、カウンターの隅にいた若い女が、しどけなくわらいながら自分のカクテルを同じように、その裂け目にそそいだ。
彼女はかなり酔っているようだった。

不意に、なにか音がした。金属を打ち合わせるような、澄んだ音。
余韻はいつまでも消えずに、むしろ大きくなって続くようだった。そればかりではなく、すべての金属がその響きに共鳴をはじめ、ほとんど耳を聾するようになったとき、すべてが浮かび上がり、空の真上にある月に向かって奔った。

やがて、わたしたちという湿った水分は、青い雫となって月の表面に落ち乾いていった。
  1. 2006/11/07(火) 03:53:57|
  2. 未分類
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青い月

その街は、地下街の大規模な工事が始まっていた。
その深夜、皎々と人工の光が深く続く地下に満ちて、でも工事現場にいるはずの人の姿はどこにもなかった。

たしか、伯父の子がこの近くでバーをひらいていたはずだということを思い出して、つぎの角を右にまがった。

さすがに驚いたのは、その一帯が解体されはじめていて、そのバーもなかば削られて、カウンターが見えていた。
そのなかでシェーカーをふっているバーテンダーが伯父の子だった。

「たいへんなことになってますね」というと

…ええ
その若い男は
「工事現場のクレーンが倒れてきて、あやうくあっちにゆくところでした」と苦笑した

あっちとは、あの世のことだろう

…わたしは「なにかカクテルを」と言った

「今夜は満月だから、ブルームーンはいかがですか」
「うん、それで」

カウンターのすみに、少女のように若い女が、ひだりあしを揺らせながら、ドーナツを囓っていた。
目の前には大振りのグラスに入れられた、あわい琥珀色のカクテルを飲んでいた。それは微かに黄緑の蛍光を放っているように思えた

3杯目のブルームーンが、グラスの底のひとしずくになったとき、わたしはどこまで深いかわからない地下工事現場を覆う鉄板と鉄板のあいだにそれをそそいだ。

その透明で薄青い滴は、ゆっくりと揺れながらおちてゆき、やがて見えなくなった。

ふとふりむくと、カウンターの隅にいた若い女が、しどけなくわらいながら自分のカクテルを同じように、その裂け目にそそいだ。
彼女はかなり酔っているようだった。

不意に、なにか音がした。金属を打ち合わせるような、澄んだ音。
余韻はいつまでも消えずに、むしろ大きくなって続くようだった。そればかりではなく、すべての金属がその響きに共鳴をはじめ、ほとんど耳を聾するようになったとき、すべてが浮かび上がり、空の真上にある月に向かって奔った。

やがて、わたしたちという湿った水分は、青い雫となって月の表面に落ち乾いていった。
  1. 2006/11/07(火) 03:37:25|
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