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あやしく意味不明のダークファンタジー&SF。 一応健全(?)

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「橋はこわされなければならない」

科学史の持つ意味とソクラテス前ギリシア哲学について、とことこちょっと考えていたりの今日でした…あ、もう昨日ですが

距離そのものはいつも絶対距離としてではなく、ひとつのスケールのなかの相互位置としてもあらわれるのですが、おなじスケールに置かれる…つまり同一ジャンルのものとして意識されても、本質的に別の範疇に属している…ということもあるわけです
ピタゴラスは、かならずしも特異に突出していたわけではないとしても

同一ジャンルに取り込まれてしまうのは、思考しそれを記述する基本語彙を、さまざまな領域の思考に共有しなければならないわれわれの思惟を読み取られる場合の、共通の(誤解あるいは誤読のパターンというか)宿命のようなものですが、形而上学と理論物理学をおなじジャンルに取り込んでしまうようなことも、後世の側からのギリシアの思索家たちの範疇と分類の把握において、少なくはなかったのかも

また、基礎論理型を構築し、それを検証してゆく思考実験をノートに書きとめる場合、あるいは討論においての例証として提出された事象・表象が、形而上学思惟に近いかたちをとってしまう、ということはありえます

自然科学の思惟の一部あるいは基底領域としてのギリシア哲学…という流れがあるのかもしれません(ですので、ソフィストたちを「自然哲学」と呼ぶ場合もありますよね)


それを裏返せば思惟は自然の認識と不可分のなにかであったという以上に、自然の全領域に配する思惟が哲学を生んできた…ということなのでしょう

ところで、ギリシア的知性のディオニュソス的昂揚ってどんなこと?ニーチェそんなこといってましたっけ?

あとね、重要なことを言います
こちら美術のマニエリズム期の自在さは好きです.それは技巧の、あるいは描画技量の頚城を逃れえた解放の奔放さ…発想をそのまま表象としてあらわせる自由の獲得でもありましたから

ただ、ぼくたちの認識の論理構築は、しばしば類型化陳腐化としての定型におしこめられてはいないでしょうか
さらにいえば、読み取る…という作業すら、この定型のフィルターを通して(安易に)行われてはいないでしょうか
それが端的にあらわれてしまうのは、何かを論ずるときなのです
類同を抽出してゆく作業(たとえば魯迅の「狂人日記」の基本発想にはガルシンの「あかい花」のそれと類同がある…と言ってしまうような場合)は、個と個、特異と特異のあいだに架橋してゆく外在化客観化の作業ですが、その架橋連接の橋は
「壊されなければならない」
のです
壊されない橋は、閉塞につながってゆきます

橋が壊された後に、川を泳いでわたり、他者という対岸の特異性群にたどりつかなければならないのです.全質的認識に到達しなければならないのです
もとより全質的認識への到達という試みは不可能性を含むのですが、その意味で満たされることの無い完結しない試みですが、でもその試論性、過程のうちにあるということが生成の活性をも生みます
思惟はもとより試論のたえまない提出とその検証の過程のうちにあるのですから
最短距離に見える道は、思惟にとっての最善の道ではない

理としての天を喪失し、その天の正義から見放された悪の荒野、混沌と虚無の絶望うちにあった魯迅は呪い、(その呪いのさきに「子供を救え」というひとことにたどりつくのですけれど)汎在としての悪のうちにキリストの死をなお共有しているそのような(ロシア的)信仰のうちにあったガルシンは、狂気と言う虚妄であるもののうちにありつつ、なおも祈ったのです

ところでイギリスの(イングランド的絶望のうちにある精神風土の)研究者、日本文学をどのようにとらえているのか、気になりませんか?


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テーマ:物書きのひとりごと - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/02/27(水) 03:48:33|
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黒い太陽(「南の思想」より)

死との出会いによってはじめてイエスは完成される.自分の皮膚の上に普遍的な死への方向付けが発見されるとき、表に裏があるとき、イエスははじめて文化になり、当初の無条件で単純で野蛮な性格から脱却する.死と終末はヘーゲル的により高次元の意識のなかに解消されるのではなく、それまでの単純な愛に死の絶望を付加する刺のように残りつづける.これは古代ギリシア人がすでにあきらかにしていた物事の表と裏の二面性に過ぎないのだ

  省察の誕生ほどにも複雑なことがあるだろうか.よい省察はいつも、すくなくとも二重になっている.ギリシアはわれわれにそのことを教えてくれる.われわれはつねにギリシアに帰らなければならない.ギリシア、それは影と光.われわれ他の「南の人間」太陽に黒い顔があることを、知っているのではなかろうか 67camus

  生きることへの絶望がなければ、生きることへの愛もない

(フランコ・カッサーノ「南の思想」130頁)



われわれ大陸のそとにある島嶼に棲むものの、もうひとつの闇.階調のある錯綜した闇.闇にかさなる闇.可視である闇.まばゆさのうちにある緑と水に溶融してゆくという体験.植物や石からわきおこる言葉と囁き、そして歌.ギリシアと対称的にみえ、同質であるなにか.ふたつの悲劇の系譜.
ほとんど交歓としてのひそやかな変身.サイキイたち…あるいはプシュケー
通底としての脆さとはかなさの浸透力…生命にみちた

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  1. 2008/02/24(日) 09:19:22|
  2. 交感神経日記
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ライバルは

中井英夫さんなんです
高校生のころ購読していた太陽という雑誌に短編を連載されていて、(購読していたのは船橋さん現代語訳の源氏が連載されていたため)その芳醇と健康に感心しつつ同時に「何かが足らない…」ようにも思われて
それは同時に源氏の世界に触れていた、ということもあるでしょう

その足らないことのひとつはポワンに収斂され終息してしまうことの安易ですが、ほかのひとつは描写のゆるぎなさです

描写は的確なだけでは足らないんです.言語限界とも関連しますが、的確であっても揺れない描写は浅いんです
ぼくたちは現実存在のうちにあり、その様態を肉体として保持している以上「終わらない物語」のなかにいるんです.つまり、開放系のうちにいて、流入と流出を実態としなければならない

健康は同時に、官能への届かなさでもあって、それは自足してしまう自己閉塞的な健康でもあります

それでも「牧神の春」は痛ましいまでの幸福感にみちた傑作です
ぜひ再読などを

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  1. 2008/02/23(土) 04:11:05|
  2. 交感神経日記
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「本質への求心」という頚城を離れて

本質というものの不在あるいは本質=ロゴスの概念としての錯誤に、後期のヴィトゲンシュタインのように覚醒してしまった現代においての思考の有効性とは、公式の結論としての提示ではなく、たえまなく提出される試論の特異点である現実存在における検証にある
あるいは、終わることのない試みである.到達点はそこにはない
同時に、その到達点を持ち得ないことが、われわれを虚無の頚城から解き放つ
われわれは不安定の流動のなかに漂うほかはないのだが、それでも海と同時に岸をもつ
その岸とはなにか
われわれが生命のひとつであり、同時に他者を…非自己をもつ、ということである

もはや収斂はない.類同性を制限的に担保しつつその類同性によって個と個の、たがいに特異点であるわれわれの流入と流出は維持される

飛躍すればそれは、外在としての、自己完結する唯一神の否定につながる.信仰というひとのあり方は、唯一神の善に収斂されない.唯一神の創出も、壮大な想念の流出にほかならない
ことばをかえれば、わたしとあなたの神がもし存在するとすれば、それはひとつではないのである

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  1. 2008/02/22(金) 20:03:25|
  2. 交感神経日記
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水晶を磨いてゆくように

古いカメラの、すこしく濁ったレンズをゆっくり磨いていると
心が鎮まります
透明なものってよいです

平面上の三次曲線を想像してもらえばよいのですが、それって
位相によって微分値が正になったり負になったりしましょう?

それのありさまって、この世界の現実存在の、個の同質に収斂
されるものの多様性を示す=類似構造としてかたりうるように
も思われて

断章・断想・アフォリズム どのように言葉にしてもよいので
すが、それは微分的何か、なのかもしれない

プロタゴラスもヘラクレイトスも断章しか残ってはいないので
すが、そもそも断章としてか語っていなかったのかもしれませ


思えば、あの滔滔と流れるかに思えるギリシア悲劇を最初に…
あらすじをしらないままに…それをよんだ子供のときの印象と
いうのは、先のわからない、滔滔たる闇のなかを手さぐりで先
に進むような不安をたたえていたではありませんか

断想としてたちあらわれる思念感想は、微分された…先の予測
できず、結果として全体性の安定のなかに安住できない不安の
うちに常にあるのかもしれない

断想の不安

それは同時に、誠実に純化されたひとの精神と思索のたちあら
われのありさまですよね

ヴィトゲンシュタインの思考構造=認識様態の祖型をプロタゴ
ラスに求めることは容易なことだとおもうのですが、そのこと
は微分の位相の共通だとおもうのです

哲学の祖型をソクラテス以前のソフィスト=幸福な思索者たち
に見いだしておくと…そこを確認しておくと、哲学の全体像が
透明に澄み渡ってみえてくるかもしれません
水晶を磨いてゆくように


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  1. 2008/02/21(木) 01:19:35|
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ヘラクレイトス あるいは「物語りは終わらない」

ヘラクレイトス あるいは「物語りは終わらない」

The waking have one common world, but the sleeping turn aside each into a world of his own(注)

短詩は夢に似ている.それは夢の鮮烈さをたずさえ、妄想の…二重の意味でも妄想のうちにあり、そこに置かれた裸形のわたしであり、同時に紐帯を…さまざまの意味で…わたしから切り立たれたなにかでもある
それは分裂したわたしでもあって、わたしからそれを見る限りにおいて、そのおぞましさをさけることはできない
それは、世界消滅の意思でもあり、世界を別の妄想に置き換えようとする意思である点で狂気に等しい

厳密な意味での対話の喪失…感覚感受性の喪失は、死である

短詩は、その受容のかたちにおいて、転移のかたちにおいて、誤読、という推移あるいは他による内在化を要求する.それを許容しないことは、他者に死をもとめることに等しい.あるいは自らのただひとりの世界をもとめるのだ.どこにも他者のいない世界を

思惟は飛ぶ蝶の、どこか気疎く、はかなげな(ephemeralな)飛翔に似ている.思惟と思索は終わらない物語を要求する.それは「個」の死を超えて語り継がれ、語り続けられる物語なのである

(注)http://www.heraclitusfragments.com/B89/index.html

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  1. 2008/02/18(月) 06:21:45|
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プロタゴラス・ヴィトゲンシュタイン

共通項をもつ全象を重ね合わせて、その位相差を見いだしてゆく、という方法が認識を明確にする、ということもあります

影響・被影響の関係性については、もちろんその実質の精密な検証が必要で、被影響側の基底層がどのようなものであり、その非影響側の状況についても、充分な検討が必要なのはもちろんです

こちら「赤い花」のガルシンと魯迅の「狂人日記」を結びつけてゼミの先生に「その発想はおもしろいよ」といっていただいたのはよいのですが、克明な検証を要求されてえらい目にあったことがあります.恐ろしいことに、中国語訳されたロシア文献、さすが地続きだけあって膨大で、目がくらむ思いがしました.中国の知識人階級の知能および暗記力って超人的ですもん.しかも(いまは海外に頭脳流出しちゃってるんじゃないですか…文革などもあったし)それに多言語世界なので語学習得力抜群.意外なことに自分たちの古典読解力が案外あれれなのは愛嬌ですが

と、たわごとはこれくらいにして

プロタゴラス
http://en.wikipedia.org/wiki/Protagoras

ヴィトゲンシュタイン
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%92%E3%83%BB%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%88%E3%82%B2%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%B3

http://en.wikipedia.org/wiki/Ludwig_Wittgenstein

思考のトレーニングに♪


いまでもガルシンは好きですけど、最近みかけないです

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  1. 2008/02/17(日) 16:02:33|
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取扱説明書メーカー

Iso・mullarさんをご使用する際には以下のことに気を付けて下さい。
よきせずに大音量を発することがありますので、ご注意下さい。
実はタバコの煙で故障する可能性があります。
700g以上のものを上に乗せたり、持たせたりしないで下さい。バランスを崩して倒れる原因となります。

--------------------------------------------------------------------------------
また、Iso・mullarさんを以下の場所でご使用にならないよう気を付けて下さい。
人気の無いところ
運動会
オシャレなところ

--------------------------------------------------------------------------------
Iso・mullarさんが故障かな?と思われる場合は以下のことを試してみて下さい。
泡を吹いている場合以外は故障ではありません。

それでもIso・mullarさんが正常に動作しない場合は。
Iso・mullarは過労の可能性があります。

http://u.p0k.net/torisetsu/

しくしく
  1. 2008/02/17(日) 03:35:51|
  2. 交感神経日記
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「葛」と言う題で変身物語を近々開始

だいたいこんなの(ではありません)ちゃんと散文にしますし、普通の公序良俗には反する物語です

翻る、深き緑の葛の葉の裏の葉色は、その色の真夏真昼に真白くも、風無くて揺るるは陽炎ばかりなる、野のはてなくもわたりゆく脛のこむらのししおきをつつむ肌辺の真白けれ、なお真白けれ足指の手指のつめの爪先のほの赤く、恋に軋むは骨白く揺るるばかりのこの身なれ、秋立てば風の真白く渡りゆく寝のみに絶ゆる野の末の虫の音ほそるばかりなれ、絶えゆくは、わが身に風は荒びはて翻るがえし、ひるがえす、猶ゆく末をしら玉の玉より白き恨み葛の葉

ひるがえる、ふかきみどりのくずのはのうらのはいろのそのいろは、まなつまひるにましろくも、かぜなくて、ゆるるはかげろうばかりなる、ののはてなくもわたりゆくはぎのこむらのししおきを、つつむはだえのましろけれ、なおましろけれあしゆびのたゆびのつめのつまさきのほのあかく、こひにきしむはほねしろくゆゆゆばかりのこのみなれ、あきたてば、かぜのましろくわたりゆく、ねのみにたゆるののすえのむしのねほそるばかりなれ、たえゆくは、わがみにかぜのすさびはてひるがえり、ひるがえす、なをゆくすえをしらたまのたまよりしろきうらみくずのは

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  1. 2008/02/16(土) 02:36:37|
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unnegative silence

unnegative silence

領域そして至高聖所白い幹をもつ樹木群 揺れて風もなしに

水と風 晴れてしまう空への憎しみ ふれたのちに鎮まってゆくあなたの髪

ビルとビルのあいだの空のひとひらの雲 茜色の 夕暮に…目をそらし

海へ どこまでも 辿りついてはいけない歩みの真昼の、白い砂の道

たがいにたがいのかいなのうちにつつむちからのかぎりにそして 沈黙

テーマ:短歌 - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/02/10(日) 10:40:16|
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水のあやなみ Ⅱの13

「ぼくたちは生からも死からも見放されているのだろうか…」
地下鉄内の乗客は意外に多かった
かたわらの女性は、すこし笑ってぼくを見つめた

…quanto se magis reperit anima segregatam ac solitariam ,tanto aptiorem se ipsam reddit ad quaerendam attingendumque creatorem et dominum suum

女性のラテン語の発語は、端正で美しい響きを持っていた.祈りそのものである言葉のように

ぼくは訳を試みる
「切り離され、孤立してゆくことによってこそ、そのような自身を見いだすことよってこそ人格は、この作りだされた世界にとって目指され求められ、あゆみよるべき人格に自らを近づけさせてゆく」

「うーん」と女性は笑った「あなたの翻訳を採点するとしたら60点かな」

「60点か…」ぼくは苦笑した「ロヨラ?」
「ええ」女性は肯いた「Exercitia Spiritualia」

「つまり…」とぼくは言った「神に見放された人間こそ、神を見いだす」
女性は笑った
「それは大胆に過ぎる要約だわ」

地下鉄の駅が近づいてきたのか、車両の速度は落ちはじめている
「プサルムが、あのように不在への呼びかけであるような悲歌に満ちているのは何故だろう…とぼくは思っていたものだから」

「愛するものに捨てられた一人のように?」女性の声は、なぜか低い呟きのようだった

「どうだろう…」ぼくはすこしうつむいて考える

そのとき、急なブレーキが軋み、ぼくたちの身体は進行方向にかたむいた.吊り革が揺れ乱れ、互いに触れあって音をたてた
そして微かなショックが続いた
「飛びこんだわね」と女性が言った
ぼくはすこし驚いて顔を上げた
「死ねるのか…この世界でも」
「死ねるわよ」女性は瞳を暗くしてぼくを見つめた「あなたは、忘れてしまったの?」



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  1. 2008/02/09(土) 01:44:09|
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翔よ 翔よ その7

…どこに楠があるのだろう
と少年は思う

その樹脂の匂いが、いまはむせるように強くなっている葛のその季節はずれの花の香りと交じりあって…初夏…を感じさせている

音も無く変容と変態は進んでいるのだろう.繭は黄色みを帯びた真珠色だった
その硬質の…同時に脆くもあるような…聖体拝受のウエファーのような表皮あるいは殻の奥に、緑を帯びた光の微粒子群が、幾筋もの流れとなって渦巻き流動しているのが見えていた

繭は全体としてアゲハ類のそれに似ていた

微かに不安のようなものがあるとすれば、蝶の構造は、どこまでの巨大化にたえられるのだろうか…ということだった

蝶の最大のアレキサンドリア Ornithoptera alexandrae でさえ、開翅長は30cm程度なのだから
だから…変態ののちにこのように巨大な蝶たちは飛べるのだろうか

飛べない蝶…

少年はボトルに入っている水を飲んだ
水道は、まだ流れている.電気は流れなくなった.ガスも止まっている.文明も静かに眠ろうとしているのだった

少年はその部屋の、温室のようにひろい天窓を見上げ「…そうだ」
とつぶやいた



出口が必要だった.空にひらく出口が
少年はモップの柄を手に斜めにひらいている窓の硝子を割っていった

硝子はきらめきながらおちて音をたてた.それを終え、硝子の破片を片付けた正午すこしまえ、
羽化がはじまった

まず少女の繭から…色彩が現われた
喪服を思わせる黒と、ちりばめられた白に含まれる回折光の虹…それは深い緑だった

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  1. 2008/02/08(金) 02:06:11|
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「夢のなかの殺人」あるいは「殺された殺人者の共犯者」

義理の伯父は思い悩んでいた
死体がある.それは義理の伯父の名前のついた死体で、それを殺したのは義理の伯父自身だった
なんとかしなければならないので、こちらも手伝うことにした
「沈めましょうか…どこかの川に」
「そうだな」

叢の先に川がある…が、軽トラックを沈めるのにはすこし浅いのではあるまいか
水位が下がったりすると、発見されてしまいそうである

「うーん」
いつのまにか義理の伯父の死体は白骨化していた…そのために何故か生々しさも増していて

ともかく埋めることにした

義理の伯父の敷地の端に
義理の伯父は、その自分自身の死体を埋めるためにスコップをふるっている

でも、やがてそこは掘り返されて、その白骨は発見されるだろう
黒い土のなかの、白い骨

義理の伯父は最後まで、自分がもう死んでいることに気が付かなかった

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  1. 2008/02/07(木) 05:42:18|
  2. ダークファンタジー
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読み代え

実存という言葉は「現実存在」と読み代えたほうが理解しやすい場合が多い

検証可能性として未来に伸展する時間展開のなかで吟味され、それを逸脱できないから

ありえないことは、ない

推移するこの世界こそがすべてであり、その外は存在しない.あるいはこの世界ではないものは、存在の話法では語りえない.言語化不能性のなかに非在として、その領域…この世界とそれ以外の境界をなぞるように記述するほかはない

記述は、おそらく複素関数の複素数項を実数化するようなかたちでかたるほかはないだろう
あるいは和声の偏差のように
和声であるということは双声であり、互いに他者であるということであって、しかも…にもかかわらず、たとえば神という絶対他者と、「私」という個あるいは特異点で「際限無く」(問いかけの反復の無限連鎖のうちに)立ちあがってくるのは、どうしようもなく「わたし」あるいは「自己とは何か」という問いかけである

「わたし」あるいは「自己とは何か」という問いかけ、が立ちあがるのは構造的に次のような理由による

たとえば他者あるいは神、を認識しようとする試み…それは風景を眺めるということや、風のを感覚することでもよいのだが、その現在性のうちに=微分化された状態で=再構成されて認識されない=時制の遡及的認識が行われない以前の…状態のうちにあるときは、「忘我」あるいは「離脱」の体験のうちにある
その「忘我」あるいは「離脱」体験から遡及的に(「わたしという担体」を紐帯として)わたしを「認識しようと試みる」とき「わたし」あるいは「自己とは何か」という問いかけが立ちあがる

構造としては反映、反照なのである
「わたし」は、構造としての空間=環境性状況性、を離れて孤在することはできない

ちょっと「大乗起信論」の構造に似ていますね




(続く)

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  1. 2008/02/07(木) 04:34:41|
  2. 交感神経日記
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翔よ 翔よ その6

街はとても静かだった

歩くひとたちもすでに少なく、眠たげで、どこか身体をゆっくり動かしていた.優美に穏やかに…やせて灰色の翳のように漂っている

車は道路にとめられて、そのなかで眠っているひとたちもいる.地下鉄ももう動いていなかったから、少年は自転車を走らせていた
舗道のわきの公園では銀杏の幹にもたれて眠っている女性の姿が見えた.手の近くに携帯電話がこぼれるように落ちて、着信があったのか白いダイオードの光を瞬かせている.奇妙にゆっくりと…その女性は手足をまるくしてゆく…縮んでゆくように

社会全体が機能をゆるやかに停止して、眠りにおちてゆこうとしている

なのに

少年はなぜ、いつもとかわりなく動くことが出来るのだろう.両親はもうさなぎになってしまったというのに

背負ったリュックのなかで、水の揺れる音がする.水道も、やがて止まるかもしれないと思ったから.食料も数日分用意してある

住宅地の、ゆるやかな坂の上にある先生の部屋の前についた.赤褐色のタイルが貼られたマンションの外壁は葛や蔦に覆われ、葛の蔓は互いに巻きあうように空に向かって立ち上っている

どこかで小型犬の甲高い鳴き声がする
どのように小さな犬であっても、さなぎの状態の命にとっては危険だった.軽い衝撃でも、液状になって流動している変態中のさなぎにとっては致命的であることを少年は知っていたのだ

先生と、その恋人の少女を変身がおわるまで守ってやるつもりで少年はここまで来ている
マンションのドアはひらいていた


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  1. 2008/02/02(土) 08:13:17|
  2. ダークファンタジー
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翔よ 翔よ その5

少女は、何も言わずに二階にあるぼくの部屋に上っていった.並んであがってゆくと、かすかに枯草に似た匂いがした.背が高くなったのも、痩せたためにそうみえているばかりではなく、たしかに高くなっているようだった
そして、目が暗く大きくなり、いつもよりもさらに妖精めいてもみえている

そして、斜面となったガラス窓をもつぼくの部屋に入ると壁に背を押し当てるようにして床に座り込んだ

「窓をあけて…」
と少女はいった

「まだ風は冷たいかも」
「いいの…」

ぼくがまどをあけると、少女は気持ちよさそうに目をほそめた.そして
「喉がかわいた」といった

ぼくは冷蔵庫にあった葡萄のジュースをコップにそそぎ、少女に手渡した
不意に、ぼくもはげしく喉がかわいた.そしてミネラルウォーターのボトルの封を切り、そのまま口をつけて飲んだ

「それ、わたしも欲しいわ」と少女はいった.ぼくはミネラルウォーターのボトルを手渡した.そしてぼくも少女の傍らの壁際に腰をおろして壁にもたれた.眠気がきた.逆らえない烈しさで、暖かい水に浸されてゆくように

窓から吹き込む風にかすかに、花の匂いが含まれている.まぶたが重くなってゆく.ぼくの肩に少女の頭がそっと乗せられた.その肩を抱く力は、もうぼくには残っていなかった

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  1. 2008/02/02(土) 08:03:06|
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