MittlereBereich

あやしく意味不明のダークファンタジー&SF。 一応健全(?)

雨と雲と虹そして人形 その3話の4

「ありがとう…」
とぼくは言った「でも、無くさないようにできるかな」
「こうすればいいわ」
女性は手をのばし、ぼくの首から背に、そして胸にその赤い紐をまわして結び、「これでいいわ」
と言った
「ありがとう」と言い、でも、ぼくはほほえむことができたのだろうか
いまのぼくに表情というものがあるのだろうか
そのようなぼくのこころの動きを感じたように、女性は言った

「なぜだかわからないけれど、あなたはむかしとすこしも変わらないように思える…声も表情も」
「そういってくれるのはうれしいけど…」
「何故でしょう…本質的なものは形態ではないのかもしれない」
「魂ということ?」
「魂などない…といっていたのあなたじゃない?」
そういって女性は笑った.ほとんど楽しげに「でも…本質的なものは命に宿るのかもしれない…」

…ぼくの声、この声はぼくの声なのだろうか
でもぼくにも聞こえ、女性にも伝わっているようだった.風の音でもなく、海鳴りでもなく
「種子としてあらわれ、その成長のうちに形となってゆく命をやどすもの…」

小さな鳥の群が海から陸にむかい低く飛んでゆく
風に雨の気配があった

「雨になるかもしれない」とぼくはいった
「その前にすこし歩きましょうか…」と彼女は言い、バッグを手に立ちあがった

その建物を出ると、向こうには廃墟の住宅群が見える.海鳥が鳴きながら高い空を過ぎてゆく
「ねえ…わたしたちはみな、悪意ある神のあやつり人形なのかしら…」
「ぼくは昔、無力な神…といったことがあったよね」
「ええ…そういまも思っている?」
「うん…つけくわえるのなら、神は悲しいんだと思う」

ぼくは顔をあげて鳥の行方を追う.海鳥の姿は雲にまぎれ、声だけが聞こえていた.雨粒が落ち始めた

「いくわね…タクシーが迎えにきたわ」
「うん…」
「元気でね…というのもなんだか変ね」と女性は笑った
ぼくもつられて笑ったのだろうか.あごがかたかた鳴っただけのように思われたけれど
「きみこそ元気で…」とぼくはいった

手をかるく振り、女性はゆっくり道をやってくるタクシーのほうに歩いていった
ぼくは白骨だけになった手で、その眠る猫のちいさなぬいぐるみを握りしめ、海に歩いた
1年後の彼女との再会を、もうこの世界のどこにも居ない遠い神に祈りながら
スポンサーサイト

テーマ:ショートショート - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/03/31(月) 03:28:50|
  2. ダークファンタジー
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2

グレイ・フラッシュあるいはフィロソフィア・ブルー

グレイ・フラッシュあるいはフィロソフィア・ブルー(←この語の使われた場面については別の場所で)

不安にさいなまれること あるいは明晰の憂鬱

精神の立つべきところに迷うときに立つべきは、アリストテレスのように、やはり数学を含む自然科学なのかもしれません(もちろん自然科学の正しさは限定的なものですけれど)

ひとは、みずからの育てた言葉の森に迷うのです.言葉の森を育てること、それはしばしば宇宙すべてを包摂しようとする壮大な偉大な企図になりもするのですが
たしかに、その迷いのなかに…書くといういとなみのなかにみずからを置かない限り、あきらかになってゆかないものもあるのです…その書かれた内容が、どんなに凡庸なものであったとしてもそうです

外在化されてしまったテキストは読み手への…だれにも拾われないかもしれない漂流瓶なのかもしれなくても…招請であるのですけれど、これはブランショの

…作家はその作品を通じてのみ自分自身に出会う.作品より前に作家は自分が何者であるかを知らないということ以前に、何者でもない.作家は作品のあとにはじめてその相貌として自らに現われる

という一節と響きあうように思われます

テーマ:物書きのひとりごと - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/03/29(土) 07:34:44|
  2. 交感神経日記
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1

雨と雲と虹そして人形 その3話の3

女性は木製のテーブルの上に、珈琲の缶をふたつ、そっと置いた.彼女の髪はもう、美しい灰色になっている.

「思いだすことがある…」とぼくは言う
「なあに?」
「あの車を走らせていた昔」
ぼくの指差す先には、もはや原型をとどめないほどに赤く錆び崩れた白い車がある
「春だったのだけれど、関東の北を走っていた.道が新しく出来ていて、下を流れる川は父とよく来た川だったことを思いだしていて…」
「……」
「人を失うということは、もうひとつの風景を失ってしまう…それを見た人を.永遠という言葉は、かつてあったこと、いまあることが失われること…その永遠の喪失に限って使われてよいことばなのかもしれないね」
「でも、あなたは、いまもここにいる」
「いつまでも…だろうか.きみがここに来なくなる日が来ても、ぼくはひとりでここにこうして座りつづけるのだろうか」
「いつかはそんな日がくるでしょう…でもそれはいまじゃないわ」

床を、砂が流れてゆく.微かな、そしてひそやかな音をたてて…
「聞こえる?」
とぼくはいった
「……」
女性は静かに肯いた



「そうだ…もうひとつ」と女性はバッグからぬいぐるみをとりだした.5cmほどの大きさの猫.眠るように目をとじていて.鈴と赤く長いひもがついていた

テーマ:ショートショート - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/03/29(土) 01:10:15|
  2. ダークファンタジー
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1

「軍犬と世界の痛み」やはり必読の1冊

あなたのキリスト教認識のチェックシートにもなりますから♪

一部、マルチン・ルターに関する衝撃的な描写が含まれます.この認識は保留はありますがぼくは同意

最後に出てくる質素な器の意味はなにか…それに対する答えの深度がチェックシートになる、という意味です

もちろん、その問いはあなたにむけられ、あなたの行為に、ひとに向けたことばを問われるのですから、連鎖して止むときの無い問いですが

今日は
マタイによる福音書の7 が気分です♪ この個所は烈しいよ
痛い…と感じたらあなたの倫理感覚はまだ大丈夫?

テーマ:物書きのひとりごと - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/03/28(金) 08:11:11|
  2. 交感神経日記
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1

雨と雲と虹そして人形 その3話の続き

その女性はタクシーを降り、こちらに向かって歩き始めた
その細い身体を包む明るいグレーのコートは すこし緑色を帯びているように思えた
ここ数年、彼女は背が伸びたように感じられる。それは姿勢がのびたからなのかもしれない、何もない空に向かってまっすぐになって

Gelassenheit ということばにはいつも、痛ましさがつきまとう。たとえエックハルトが口にしたとしても
ハイデガーなら、その痛ましさはさらに切ない

だから…解放には哀切といってよい何かが息をひそめている。あるいは無防備のいのちそのものの静けさ

でもぼくは…

彼女はその場所にいるぼくを認め、すこし頬笑んで手をかるく振った
いまは冬あるいは春の初めなのだろうか

ぼくは寒さを感じないけれど

彼女はぼくのテーブルに向かいあう位置に座り、そしてベージュのバッグから紙の包みを出した
「食べられるのでしょう…すこしなら」
ぼくはかるくうなずき、笑顔になっていった
「味わうことはできる」
「その自動販売機生きているみたいね」
彼女の指さす方向を向くと、その自動販売機には光があった
「どうだろう…」
「珈琲でいい?」
「うん」

すっ と立ち上がって彼女は数枚の硬貨を、その販売機のなかに入れた
重い音がした

「よかった…」
笑顔になって、彼女は缶珈琲の黒い缶を手に、テーブルに戻ってきた

(続きます)

テーマ:ショートショート - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/03/27(木) 12:03:08|
  2. ダークファンタジー
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1

雨と雲と虹 そして人形 その 3話

流砂はそのコンクリートの床を砂が覆いはじめていた
海にあるときは黒く暗い色調に見える
その砂がその季節はずれの海の家のような場所に、開け放たれたアルミニウム合金のサッシではない古めかしくもある引き戸から、おだやかな風とともに砂が吹きこんでくる

…いや

砂の流れが先にあり、それを風が追っているようなそのような、ひそやかさだった

すこし不思議なことに海岸では暗い鉄色である砂はいま、この建物…というには簡素な場所では白く見えている
でもそれは塩などの結晶感とは違ってカルシウムのように不透明な…そう…骨の砕かれて細かくなったのちの粒子が音も無く流れているようにも、思えたのだったぼくは人を、そこで待っていた

随分ながいあいだ待っていたのかもしれないし、そうではないのかもしれない

海岸からすこし高くなったゆるやかな土手の道に、一台の黒いタクシーがとまり、小柄な女性が降りてきた

(続きます)

テーマ:ショートショート - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/03/27(木) 08:29:37|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1

メタ・イマジナリについて

探査中これを発見
http://plato.stanford.edu/entries/qm-decoherence/

量子デコーヒレンス

ブラックホールパラドックスの問題の一部は、ユニタリ性の保存の問題でもあるのですが、そのさきにメタ・イマジナリとしてのイデアを望見することができるかも…というのはもちろん飛躍です♪

テーマ:物書きのひとりごと - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/03/26(水) 02:01:13|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1

雨と雲と虹そして人形 その2話の2

少女の姿をしたフィギュアが小さく揺れている
バイクは首都高速道のゲートを通過する

冷たい歓喜にも似て、バイクのエンジンはその回転を高めてゆく
ぼくはある男の残した詩の一節を思いだす

「ぼくのそばにいて.それだけが防げるのだから
ぼくの黒い狂気が覚醒するのを.凶悪が覚醒するのを…きみだけが防げるのだから
ぼくの腕のなかにいて
ぼくの黒い憎悪がきみにむかって赤い口を開くのを…きみだけが防げるのだから
あの日、あの過去がぼくたちの未来を互いに奪いあい、でもどこまでも晴れていた空」

そう…晴れた真昼の空は狂気にどこか似ている
そしてぼくたちのように認識する意識の絶望は、この世の終わりまで続くだろう…そのひとつひとつの命のなかに、その命の担いとして…宿命として

都市は静かだった.そして寂しかった.ひとりはひとりのままにいてまばゆい光と夜の闇のなかにいる.そしていま、ぼくの駆っているバイクの高出力の自在感は、頚城を逃れた逸走の…浮遊感でもあった

そう…あの男の詩は次のように結ばれていた
「眠ろう.放浪者のように.
呪われた永遠の旅人のように
…もうどこにも、ぼくたちの場所はないのだから」

速度は100km/hを超えて、バイクの巻き起こす風が街のくぐもった音のすべてを消し、その遮断の中にいて、ぼくのこころは静かになってゆく

少女の姿をしたフィギュアも不思議な静止のなかにあった.少女のフィギュアは微笑み、そして両手をひろげている.そこにいけば、抱きとめてくれるように.そのフィギュアは、少女のような女性がぼくにくれたものだった.いまでは遠い記憶のなかのその女性の面影を、ぼくはいまなつかしむ

寂しい星たちのように、首都高速道路第三環状線にはバイクたちが集まってくる.黒や銀あるいは真珠色、あるいはクロームメタリックの鏡のようなカウリングをまとって.そしてこの夜誰かが死ぬ.それはぼくかもしれないし、そうではなくとも、ぼくによく似ただれかには違いなかった

流星たちの夜の、その限りない静けさ.ひそやかであることの深い歓喜
水銀灯がつらなり、その投げる白い光の作るぼくの影が、ぼくを追い越してゆく

ぼくは目を閉じる
そしてひらく
そこには少女の姿をしたフィギュアが小さく揺れている

速度表示は200km/hを超えてゆく







テーマ:ショートショート - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/03/26(水) 01:37:53|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1

雨と雲と虹 そして人形 その2話の1

夕暮の朱が急速に紫に奪われてゆく
そう感じたのは雲が流れて、空を覆いはじめているからだった

ぼくの部屋の窓にはカーテンが無い.スケッチ用の板が机のかわりで、さっきまで読んでいたのは「ハザール事典」の女性版だった

FZ14改NightDoll バイクのカウリングのハーフマットブラックとジュラルミンフレームにほどこされたチタニウム鍍金の淡い金色は、真昼には似あわなかった
ここの半地下の駐車場に置かれているそれは、夕暮から黎明にかけての色彩のようにいつも思えていた

キーホルダーには小さなフィギュアがついている.黒い髪の少女の.長い年月が過ぎたのだけれど、大切にあつかってきたから、傷はほとんどついていない

ぼくは壁に吊られている黒のレザーウエアを身につける.どこにも行け、そしてどこにも行けない1夜のために
黒のレザーウエアにいくつか残されている傷痕が蘇らせるものは、でも痛みではなく、過ぎ去っていった遠い時間のことだった.そしてあのたしかな真夏

ぼくはレザーウエアを軋ませながら階下におりてゆく.黒に、金色の蝶をひとつだけ描いたヘルメットを手に

バイクは、すこし身体を斜めにしてたたずんでいる.どこか放心したように

でも、ぼくが歩み寄り、キーをさしこみひねると、かすかに身震いするだけで、エンジンは音もなく目覚める.スロットルをひらいても、特殊なサイレンサに消音されて、排気音は電線を震わせる風ほどにも聞こえない

ぼくはヘルメットをかぶり、顎のベルトをロックしバイクとともに走りだす

夕暮の青がすべての風景を支配し始めたその中に
風はまだつめたくて、ウインドウシールドの内側では.少女の姿をしたフィギュアが、キーに吊られてちいさく揺れているのだった

テーマ:ショートショート - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/03/24(月) 08:27:26|
  2. ダークファンタジー
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1

雨と虹と雲…そして人形 その1話

いつか異常気象が日常のことになり、晴れた日に、そのまばゆいほどあかるい青の空をわたってゆく白い雲がおもいがけなく多量の雨を降らせてあざやかに、多彩の虹をみることも稀ではなくなっていたのです
そう…その虹の紫の深さといったらなかったのです
ほら、紫の水晶ってあるでしょう.紫がその深さの極みでそれを超えて透明にかわってゆく、その虹が真昼のあざやかさのなかに見えるのですから

もうひとつ異常なことかもしれないことと言えば…ということはいまはお話いたしますまい

ウジナやコロモやミツギやスズカといったメーカーはその洗練の極みに達して美しい…というよりもかわいくあでやかな人形を作り、それはあらゆる年齢層のひとびとにゆきわたって、いままちをあゆむひとたちの手はすべて、その人形たちにつながれていたのです.ほとんどは少女や小年たちの姿をした人形に

石油はもう昔に枯渇して、あの厄災の日のあと人類の大半は地球のあちこちから姿を消し、いくつかの雨に恵まれた土地だけが命をつなぐことができたのです

食料さえあればともかくもひとは生き延びることができましたから

人口は、やはりずいぶんすくなくなってしまい、都市にのこされた古いビルのひとつの屋上の菜園にいま、高齢の婦人が白から赤にあざやかにグラデーションするハツカダイコンを収穫していたのでした

都市の空に立つ風力発電風車の、回転する大きなウイングブレイドの影が、巨大な鳥の翼のように、菜園の濃い緑の上を過ぎてゆきます

高齢の女性は立ちあがって空を見上げました.そして屋上のベンチにあるきゆっくりそこにベンチがあることを確かめるようにして腰をおろしました

そこには1冊の本があるのでした
「二つの部屋、ひとつの食卓」という平凡な題の断想集 三年前に意外なほど長生きをして…90才を過ぎてこの世を去ったあのひとの残した本
それを高齢のその婦人はひらきました

…雨になるかも知れないね.そのときぼくはそう言った

婦人は青空を見上げました.そして
「雨になるかもしれないわ」とつぶやきました
かたわらの小年人形が
「雨になるかもしれないの?」
と、高齢の婦人を見上げました
「ええ、雨になるかもしれないわ」
と婦人は微笑みました
そしてその微笑みは淡くなり、婦人は眠るようにうなだれました
そして目が閉じられてゆきました
「雨になるのかな…」
そう空をみあげる小年人形の目の映す真昼の空には、どこか初夏の気配も感じられているのでした


テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/03/20(木) 07:35:37|
  2. ダークファンタジー
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1

雨と虹と雲…そして人形 承前

はじめに

ちょっとしばらく方向をかえて、15回の予定でショーとショートファンタジーの連作をお読みくださいね
(かるく、やさしい内容です)

時代は未来なのか過去なのかよくわからないけどまあ未来
「kawaii」フィギュア文化とロボットテクノロジーがその頂点に達したころの日本が舞台です

テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/03/20(木) 07:26:51|
  2. ダークファンタジー
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2

超越的なものなど、なにもない

超越的なものなど、なにもない

神についていえば、神は超越を意思しない
意思というより感受性であるから

定位させ、規定する記述認識連結は、つねに捨象をふくむ思考形態でもある

それは正しく、そして正しくはない
有効性有用性つまり功利性において正しいことはすべてではない
すべてではないこと、分離不能なこと
そのような事象のうちから、なにかを選択するということの意味は問われ、つねに問いなおす必要がある

あなたの思考は何も決定しない.だからあなたの思考に何かをゆだねきってはいけない.あなたの結論はつねに過去に属する

唯一立ち現われるのは、思考という行為そのものであって、思考によって記述されるものの内容や意味ではない

あなたは正しく、そして間違っている

神はその柔和なこころで悲しむ神である
同時に、あなたの喜びをともによろこぶ神でもあることを忘れてはいけない
あなたが苦痛ではなくやすらぎのうちにあることを神は望む

他者と他者が、響きあう、ということ.夜空にその光りを行き交わせ反響させる星たちのように

テーマ:物書きのひとりごと - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/03/19(水) 01:03:53|
  2. 交感神経日記
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1

no-one is there

思考の様式および基本パターンは、数語の文章にもあらわれる

いうまでもなく、それは語られる内容のことではなく、思惟を組み立ててゆく論理構造のことである

技術的なことをいえば、ひとの基本的な論理構造を認識しようとする場合、肯定あるいは否定にいたる論理構造を追えばよい

もうひとつ

文章を批判的に読まない、ということが若いうちに身につけておくべき大切な姿勢のひとつだそうです
生物学のS先生の言によると

それを聞いたのが20代になったばかりのころなので、ふうん…と思うだけだったのですが、いまはその理由がわかります

とはいっても、思考の軌跡を追おうとしても、フレーズ類型の羅列あるいは文章のコラージュでしかないように思われる文章もあったりなかったり

その意味で、自分の母語以外の言葉で文章を書く事も、論理力養成には大切な訓練の一つなのかも



吹きすぎてゆく春の風そのまどはひらかれたままだれも居なくて

The Wind blows its own wish、the window always open.but noone is there

テーマ:物書きのひとりごと - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/03/18(火) 20:46:35|
  2. 交感神経日記
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1

その断崖の下には

砂浜をもつ海岸がひろがっていることをきみは知っているのだろうか
ゆるやかに湾曲し、内側にたたえられているおだやかな海がそこに広がっている

もちろん、降りてゆくこともできる

(断崖を降りることはおすすめできない.岩場の技量が必要だし、高所恐怖症のひとには恐ろしい体験になるから)

もちろん迂回してそこにいたるのだけれど、そこを歩いてみたい気もするのだ

ピクニックバスケットに、クッキーやパンと飲み物を入れて、まだ冷たい春の風の、ときおりのあたたかさも感じながら

ぼくたちの背負ってしまっている幾重もの頚城の、結局は愚かしさと狡猾と不純

「無力に近い神」への裏切り
パンを求められたら、こばむことはできない、ということ

わかりやすさに逃れてはいけないし…分析可能な階層にとどまってもいけない
感覚・受容・認識のできる領域はぼくたちの想像を超えて深く広い

そこに歩み入ることを、逃れてはいけない


夢はいつもいくたびも切り絶たれ…黎明に覚醒寒きぼくの獣人

テーマ:物書きのひとりごと - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/03/18(火) 03:06:25|
  2. 交感神経日記
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1

本日届いた本

kokuseki



いきなり驚く記述があります

目から鱗…

意外な方向からの視界が開けます

テーマ:短歌 - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/03/17(月) 18:32:10|
  2. 交感神経日記
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

たぶん最大の誤解のひとつ

瞑想について、たぶん未経験のかたは誤解しているのだと思うし、経験されたかたも深度がそこまでいたりにくいものなので、そこの手前でとどまっている場合も多いでしょう…ですから、そこで充分とも言えるので、ひとに話すをためらってきたのですが、こちらの経験では、静寂と沈静の先に出会うのは殆ど不可視であるほどの濃い闇と、「魔」です.そこに「魔」のうごめいている「魔境」です

かろうじて、おそらく反応としてそこまでいたらず、脱自の空白の恍惚へ逃れ出るのも、ひとのこころとしては当然の防御反応ですが、そこにとどまっている限り、神でも仏でも呼称はなんでもよいのですけれど、ぼくたちに「聖なる存在」とその働きかけは必要ではないではありませんか.もちろん瞑想のうちに「聖なるもの」を想念として思い描くありかたを否定はしないのですけれど、それは祈りとしては夢想の祈りです.あるいはある種の幸福な眠りです

瞑想がある深度を超えたとき、そこで出会うのはあざやかに可視である闇と、神無き「魔境」です
恐怖を超えた恐怖です

だからこそ、ほとんど恐怖のために、そこからの救いを求めざるをえず、神を呼び、仏を呼ぶのです
そこではじめて、裸形であり無力でもあるぼくたちは「祈り」と出会うのです…祈りであり、悲鳴でもあるもの

もし唯一、その魔境に「聖なるもの」の介入があるとすれば、ぼくたちを「祈り」に導くその構造がそれではないかと

この「神無き」ようにも見え「魔なるもの」暴力と悪意だけは偏在しているようにも見える世界に生きていること
そこで幼子が求めるように庇護のやすらぎを求めること.それが「祈り」でもあり、この世界を変容させてゆくことのできる、かよわくもたのむべき「力」のひとつです

あとひとつの「力」とはなにか…というのは機会をあらためて…というより、まだよくわかっていないのですが

あと「清浄境」で一種の恍惚体験としての「見神」にいたる自然の中での歩行、というのもありますよね.風景に人為を含まなく見えるような場所での長いお散歩ののちにあらわれるような

それはまた別の種類の…でも根源はおそらくは同一の…体験なのでしょうか

テーマ:物書きのひとりごと - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/03/16(日) 06:34:39|
  2. 交感神経日記
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

このように見ると印象が違うARVO・PART

http://jp.youtube.com/watch?v=TbxnnC22gwY&feature=related

http://jp.youtube.com/watch?v=6OwdlKiB_ro&feature=related

http://jp.youtube.com/watch?v=QtFPdBUl7XQ

Arvo Partのスターバトマーテルも好き

関連

ヴィヴァルディのもよい
http://jp.youtube.com/watch?v=1W5A-cEG4OQ&feature=related

もちろんペルゴレージのも
http://jp.youtube.com/watch?v=AmcVsrlmQMA&feature=related

Andreas Scholl だよ♪

Andreas Scholl
  1. 2008/03/13(木) 20:54:20|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

メタミドホス のメタって

「この餃子味が変…うぐっ」ってきみが白目を剥いたから1月29日はメタミドホス記念日

は、ともかくとして

メタミドホスのメタって超という意味ではなくて、「中間の」…とか「あいだに置かれた」という意味なんです
それはギリシア語の原義により近い使われ方です
「メタ(meta)はベンゼン等の六員環の化合物において、1位と3位に置換基が結合していることを示すときに用いる」

思いっきり関係無いですけど、こっちのハンドルネームのsym82746のsymって
「symはベンゼン等の六員環の化合物において、1位と3位と5位に置換基が結合していることを示すときに用いる」のsymです実は
わかるひとは、ははん…とおもったはず
(重合構造を思い描くのって、頭がくらくらするほど好き)

で、英語の接頭辞metaは

http://en.wikipedia.org/wiki/Meta
(日本語訳はありません…というかあるけどないに等しい)

で、余談ですが、1980年代にM先生が、「いまどき大まじめにメタ言語なんて言ってるの日本だけじゃないかなあ」とおっしゃってました

それにしても、いつからメタが「上位の」とか「超えた」という意味になってしまったんだろ

ダゴニュのいうメタイメージも「イメージ群」あるいは「個別イメージの集合」に近いのにね

さらにいえば形而上学の形而上って朱子学を経由した「易経」出典の言葉です
ぼくたち日本人のある部分には、朱子学のヒエラルキー宇宙観の残滓が見られます
思惟の基本パターンの中にさえ残っている
そこは見落としちゃいけない基底層であることをお忘れなく



テーマ:物書きのひとりごと - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/03/12(水) 03:07:00|
  2. 交感神経日記
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1

フランシーヌ人形

それに似せた対象が人である人形とは、特殊な人形といえるのかもしれないのです
同質をそれぞれに…他者として…含みながら、その異質は先鋭するほかはなく

それが死者に似せた人形であるとしたら、その人形に願望として期待される不死性によって、その原型である人間の死を際立たせてしまう
その人形は逃れられない悲しみを宿命的に担うことになります

祖型である人間の痛みと、その人形の悲しみの連鎖…あるいは悲しみを背負うということ

もし死せる少女に似せたフランシーヌ人形を、その宿命の表象として造形するならば、錯綜する…対立的でさえある要素を…並存させる方途を探さなければならないのです

幸い、日本人であるわれわれは、造形の伝承のうちにその方途のひとつをすでに…先人の無限の追求によって得ているのではないでしょうか

フランシーヌ人形は、究極をふくむ…究極そのものは、もちろんいくつもの究極点をもつので…解はひとつではありませんが、至高解を解かなければならない造形となるでしょう


死を表現し、その死によってうしなわれた生を表現する
生命の華やかさを表現し、影のように忍びよる衰弱の蒼白を表現する
喜びの極みに、不意に転じてゆく悲しみを表現する

でも、不可能ではない…と思われるのは、それが無数のひとたちによって経験されてきたことだからなのかもしれません

その微笑にかなしみが満ちるとき、フランシーヌ人形はふたたびこの世界にあらわれるのではないでしょうか

テーマ:物書きのひとりごと - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/03/10(月) 19:44:06|
  2. 交感神経日記
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

現象と事象

その場ではよい説明が思い浮かばなかったのですが、道を歩きながら考えていたところでは、現象と事象、使い分けをする場合は次のようになるようです

「ボールのころがり」は現象で「ころがるボール」は事象

「ぼくが考えること」は現象で「考えているぼく」は事象

フッサールの場合は…その日本語翻訳の場合は「現象」と一般に翻訳されてしまう事柄を「事象」の意味で…物に現象が付与された状態=事象に引き寄せてゆこうという意思のもとに使っています

言語限界どころじゃなくて、「現象」は幅の広すぎる内容をしめすことがあり、エルンスト・マッハを…つまりはアリストテレスを源流とする「現象学的思考」やフッサールの
Ph(aウムラウト)nomenologie フェノメノロギーは、「すべての現象はそれの担体である物質の拘束のもとに置かれ、それをはなれて現象の背後にある実体というようなものは無い」という主張
つまり「ロゴスとしての実在」の否定という(方向と視座)=ベクトル を持っています

そのベクトルを基底として持つハイデガーの理解のためには、フッサールへ遡及しなければならず、さらにはエルンスト・マッハにたどりつかなければなりません

さらにいえば、マッハとフッサールのフェノメロギー=現象学 は、その取り扱う内容と方向性からいえば「事象学」といってもよいのかもしれません

こんな説明でよいかなあ

つけくわえれば文学の取り扱うものは「事象」です

あと「ゲシュタルト」の提唱者も…始祖も…エルンスト・マッハなのです

こっち、このところマッハマッハって騒いでいるのはそんなわけなのでした♪

で、タイの映画で、ヴィトゲンシュタインがみたらば感動したに違いないアクション映画「マッハ」を借りてごらんになることをお勧めします(落涙必至なんだってさ)

あと、アリストテレスの「詩学」はミメーシス詩学ですね♪

テーマ:物書きのひとりごと - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/03/10(月) 04:26:08|
  2. 交感神経日記
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

春の光

ball
アフォーダンスの光ですね
(あほーざんす…じゃないよ)

あと、球体と球体は3点で接触していますね

テーマ:ショートショート - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/03/07(金) 18:31:31|
  2. 交感神経日記
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1

日記をこっちにも

やや本音がでてますかね

テーマ:物書きのひとりごと - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/03/06(木) 17:41:33|
  2. 交感神経日記
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

アリストテレスの「政治学」が意外なおもしろさ

中央公論社の世界の名著に所収なのでご覧下さい

…というかいまの社会、アリストテレスのすでに到達していた視座から退行してないか
大国のAとかCとかさ。Jはまだましなので、アリストテレスの理想に近づけるようにがんばりたいものです

おまけというには、凄いアニメーションです
http://jp.youtube.com/watch?v=lul3zySFO8E&feature=related
  1. 2008/03/04(火) 18:19:57|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1

ピグマリオンシンドローム その3

ぼくの自転車を走らせている方向には、戦災をまぬかれた旧市街がある
江戸の雰囲気が、どこか残ってもいて、大正の建物もさりげなくそこに立っていたりするのだ
ポプラで街路樹はあったから、木洩れ陽ばかりではなくその旧市街のいくつか古い店の集まったあたりの大気も、淡い緑のひかりに染まるのだった
そのような植物の透過光は皮膚と静脈と肉であるぼくたちの身体の奥深くにさしこみ、なにかを変容させてゆく気がする
血を澄ませて、燐光の緑をその真紅に添わせるのだとしたら

でも、それは健康な喜びではなく、病むことに近いなにかなのかもしれない
あるいは、ひとつの体温のない冷えた感覚を受け入れること.死そのものに似たまなざしを受け入れることであるのだとしたら、植物の繁茂する初夏は静かに憂鬱な季節なのかもしれなかった

ぼくは、その古くからの店のあつまっている一角に自転車を止めた

奥山玲子というのが工房の女主人の名前であったけれど、昨日一枚のメモをわたされていたのである.


ぼくのシャツのポケットからとりだされたメモは、藁の混じる紙に、ブルーブラックのインクで書かれていた.ブルーブラックのインクは乾き、角度によっては虹の赤に見えてもいる
読みにくいほどの達筆.この時代ではなく、大正の初めの頃の、毛筆の文字に慣れた女性が、万年筆でかいたような仮名
でも、文章はやはり、この時代のひとのものだった


…羊腸のガット(スポーツ用品店でね) あたらしい玉蜀黍(ひげがたくさん生えでているものがよい…ついでにレモンとバナナを) 画材店で、シリコンと硬化材.硝子のウィスカー.大理石の色のレジン.石膏を .そして慶応元年創業の寿庵で和菓子を4つ


ぼくの自転車の籠は、寿庵で買った淡雪羹と画材店の買い物でいっぱいになってしまったので、地中海産のやや小ぶりのレモンやバナナと、今朝とれたばかりだという新鮮な玉蜀黍で、ぼくのリュックはひどく重くなってしまった

玉蜀黍の赤紫と淡い金のひげは、布につつまれた少女の…どこか死の匂いのする身体からあふれでる髪…身体とはべつの生命をもつその髪にどこか似てもいる

…もしかして
と、ぼくは思い始めていた
だとすると、玉蜀黍はこれでは足らないのかもしれない







テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/03/04(火) 03:51:00|
  2. ダークファンタジー
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1

コンスタラチオン

星たちの声露草の露朝の霧暗渠にいまも水は流れて
頬杖をついて眺めるきみの眠り風あたたかに初夏の朝
滅びゆく草たちの実は深紫重たげになお水を抱きつつ
まどろめば吹き込む風にけはいして降る砂のごと音幽けくも
コンスタラチオン星群は声なく滅ぶ朝の空を覚醒寒く逝くうつろ舟

テーマ:短歌 - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/03/04(火) 02:54:09|
  2. 交感神経日記
  3. | トラックバック:4
  4. | コメント:0

牛さんを食べるのはやめます.(←宣言)惻隠の情なきはひとにあらざるなりby孟子だもん;注1
ということは、ハンバーガーはえびグラタンとかフィレオフィッシュかぁ
ん?まあオッケーじゃん

注1 ここ論理拡張すると、人にして善根あらざるものは人にあらざるなり…となるでしょう

ご参考までに

そういえば「孟子集注」のゼミ楽しかったです


  1. 2008/03/04(火) 02:45:00|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

ディラン・トマス「ロンドンの焼死した少女の追悼への拒絶」

A Refusal to Mourn the Death, by Fire, of a Child in London


Never until the mankind making
Bird beast and flower
Fathering and all humbling darkness
Tells with silence the last light breaking
And the still hour
Is come of the sea tumbling in harness

And I must enter again the round
Zion of the water bead
And the synagogue of the ear of corn
Shall I let pray the shadow of a sound
Or sow my salt seed
In the least valley of sackcloth to mourn

The majesty and burning of the child's death.
I shall not murder
The mankind of her going with a grave truth
Nor blaspheme down the stations of the breath
With any further
Elegy of innocence and youth.

Deep with the first dead lies London's daughter,
Robed in the long friends,
The grains beyond age, the dark veins of her mother,
Secret by the unmourning water
Of the riding Thames.
After the first death, there is no other.


  1. 2008/03/02(日) 05:41:59|
  2. 交感神経日記
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

ピグマリオンシンドローム その2

工房の女主人の眠りはいつものように深かった.目覚めても、どこか覚醒しきれないものを多く残してもいるようで、どこか眠りの続きを生きているようでもあった

浅い硝子の水盤にたたえられた水は、細い水草のためか緑を帯びて、あけはなたれた窓からふきこむ風にさざなみだち、光を揺らすのだ

…線形の文様であるはずの光と影の明暗は、干渉によるものなのだろうか、輪郭をくきやかにする斑点となって広がる.日差しの強いときなど、ほとんどまぶしいほどに

冷たい木洩れ陽のように…揺れながら…うすい水色の壁に、灰色に赤紫を交えた古いカーテンに、そしてロングソファーに横たわる女主人の投げ出された左のうでに白い光の斑紋として落ちて揺れる

…爬虫類が雨林の、あるいは乾いた林と草むらに潜むときの、しずかな、同時にすずやかな斑紋…すこし濁る緑に白
…白は眠りのいろであるのかもしれない
…そして同時に、肉体奥深くの傷痕の色でもあるのかもしれない

でも、女主人とはいうものの彼女は老いてはいない.まだ40歳になっていないのだから、ずいぶん若いといってよいのだ
ただ、世を捨てたようにして暮らしているから、どこか老女めいてもいるけれど
そして、あまり太陽にはあたらない生活をしているから、肌は白く若々しかった

ひとり娘がいた…そしてその娘の従姉の少女がひとり、その娘を世話をするように、あるいは共同生活者としていっしょに暮らしている.従姉の親は他界したが、非常に限られた範囲のひとびとのあいだで、評価の極めて高い画家だった

1冊の画集がある.その画家の絵は、その画集のために描かれたのだという.画集には、短い解説文、あるいは断想のようなものがついている.それは画家自身によるものではないことは、はっきりしていた
また…非常に限られた範囲のひとびとのあいだで、評価の極めて高い画家だった…というには理由がある
その画集が非売品であり、しかも50部にみたないものしかこの世に存在しない…から

でも、ぼくはその画集を少年の頃にみてしまったのだ.女性の髪の毛よりさらに細い線と、あわい階調…淡い色彩…でもその弱さでしかないはずのものから生み出されている表象はゆるぎなく強靭ですらあるものだった
描かれているのは、人と植物の風景である.あるいは交錯した平面に移る影のようなもの.そのなかに、少女らしい手と足の重なるように描かれた印象的な一枚がある
珍しくそれには…「人形」…という題が付いている

そしてなぜか、ぼくはつまり、その画家の晩年の、たったひとりの絵の弟子だったのだが

ぼくはシャツのポケットから紙片をとりだした

テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/03/01(土) 21:11:19|
  2. ダークファンタジー
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

ピグマリオンシンドローム その1

中庭の温室の横で、父親の遺したイギリス製の28inch自転車を引きだし、そののタイヤの細いリムに繋がって張りつめているスポークを、レンチで軽く敲きながら音をおなじにしてゆく.それは弦楽器の調律に似ているのだろうか

レンチでしめてゆくにつれ、音は高く澄んだ音にかわってゆき、スポークからの張力は統一されリムは真円になって、手でまわすとレコード盤のターンテーブルのように音も無くまわる.放射状にのびた車輪のスポークだけがきらめいて陽光を散乱させている.公園の噴水のように

庭の樹木の高い梢で鳥が鳴いている声がする


その方向を見上げると、枝を揺らして鳥は飛び去っていった.緑…というより空色に近い小さな鳥だった.なんという名前の鳥だろう

小鳥…という名をもつパオロ・ウッチェロは沈黙の少女と暮らしていたというけれど、それは人間の少女だったのだろうか

ぼくは庭の池の水で手をあらうと、庭に置かれた石のベンチの上に置かれた布製のかばんを肩にかけ、自転車にまたがると走り始めた

広い公園と墓地をよこぎってゆく道なので、ゆきかう車は少なかった.桜の季節は過ぎ、ダグウッドの花も散って、でも桜の匂いがする.桜は小さな実をつけはじめているのだ
頬に、なにかが触れた.氷のちいさな粒のような…空は雲ひとつなく晴れていたのだけれど

ぼくはこれから、薄暗いあの工房にゆくのだ.石膏の匂い.亜麻仁油の匂い.樹脂の…そして銅の、真鍮の鉄の…そして冷たい銀の匂いの、花の…薔薇たちの匂いもする

そして、いつもどこかひんやりとした空気のなかの、かすかに病んだ少女の匂いのするなかに

[ピグマリオンシンドローム その1]の続きを読む

テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/03/01(土) 21:07:19|
  2. ダークファンタジー
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

アンスコム・ヴィトゲンシュタイン・CSルイス・セシルディルイス・ディラントマス

ヴィトゲンシュタインの後継者のひとりであるアンスコムって女性だぁ

人工知性の問題を考えるとき、デカルト破綻はかなりあきらかになってくるのですが、その出口のひとつがアンスコムの行為認識が積分値としての…時間記憶に支配されない…自己認識として重要になってくるはず

みたいなことをもりこみたい「カンギレムトランザクション」はいまのところアクションSFみたいになっているのはなぜだあ

テーマ:物書きのひとりごと - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/03/01(土) 04:55:49|
  2. 交感神経日記
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

プロフィール

sym82746

Author:sym82746
sym82746でぐぐっていただければ、わたしのプロフィールがなんとなくつかんでいただけるかも。現在6匹の猫と暮らしています

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

プロフィール

sym82746

Author:sym82746
sym82746でぐぐっていただければ、わたしのプロフィールがなんとなくつかんでいただけるかも。現在6匹の猫と暮らしています

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

blogpet

アナログFlash時計26(アクアブルー)








ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する