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あやしく意味不明のダークファンタジー&SF。 一応健全(?)

Metalic Rain その5

捜神記に武帝が東方朔に「昆明池を掘ろうとしたらたくさんの黒い灰が出てきたがこれは?」と尋ねるところがあります
東方朔にもわからず、西域の客にたずねると、「それはこの前の世界が滅びたときに生じた劫灰というものです」と答えるのです
このエピソードちょっと不思議な恐ろしさがありますね

ふと昭和20年3月10日に降った灰のことを思いだします



包む腕も火もここになく冬に包まれなおあたたかな灰色の闇
冬の空に燃え尽きてゆく蝶たちの灰透明に繊金の塵
劫灰の上を素足であゆむ廃墟ふいに眠ろうとするきみを支えて
菫色に帯電する空を埋めていた灰雨になることもできずに
ゆく街のひかりやわらかく歌は途絶えて雲にのぼってゆくぼくたちの灰


http://baike.baidu.com/view/781430.html

メモ;ランガージュの差異 情動の共有
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  1. 2008/12/31(水) 06:28:22|
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水のあやなみ Ⅱ その34

…でも
ぼくたちはいま、こうしている

内側の奥深くでも触れながら

…そう、触れあっている肌と肌からは、漿液が流出してゆく.水硝子のように層になって、あるいは塩でできた雲母のような薄片となって光を反射し、水に溶けてゆく
すこし濁った陽炎のように

女性は低く笑った
その声の暗さが…疲労の印象がぼくを驚かせている
…あなたの感覚も、言葉による再構築に取りこまれてゆくのだわ

…ぼくたちの言葉には変移を映す力はないと思う
…でも、わたしたちの感覚は、変移しかとらえられない

ぼくは胸に、女性の背を包む.わずかな動きに、水が流れ込み流れ出す.かすかなざわめきとともに.でも、触れている場所から、あたたかさが伝わる.水は…というより流れている湯はぼくたちの体温よりもあたたかだったから、それも不思議だったけれど

…何故だろう?
…何が?
女性は黒く大きな瞳でぼくを見上げている

「平衡していると熱は流れないんじゃなかったかな」
「それが?」
「なのに、いまきみの背から感じるあたたかさは?」
「…均衡しても、静止しているわけじゃないとおもうわ」
「…と、いうと?」
「熱の移動はおきているのよ.でも流入し流出する熱の流れが等しくなるから.気体のマクスウェル・ボルツマン分布って習ったでしょう」
「そうか」
とぼくは言い、女性の髪に頬をよせた

…風
女性はつぶやくように言った



テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/12/29(月) 05:23:57|
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Metalic Rain その4

ううう がうがう
おなかすいた

クォーターパウンダーが食べたい

最近、犬っぽくなっておりまして、理由は知る人ぞ知るというw(イミフ

…ゆきます

レヴィナスの有責性あるいは身代わりとしての唯一性は、おそらく 主体をわたしという閉ざしに回収しない、という意味で観念論が全体あるいは全体主義、を構築してしまう陥穽を逃れるただひとつの回廊であるに違いなく、それは同時に自同性の縮小反復…縮小をもたらすのは時間化歴史化ですが…に閉じてゆくことをのりこえてゆくただひとつの認識のかたちであるのでしょう

IL Y A 「ぼくがここにいる」という他者にひらく応答は、同時に求めでもあることには注意しておく必要もあるでしょう

乾くことの清澄である冬卵胞に眠るひとりの身代わりはなく
ほそみゆく菌糸たちいま低いひかりに輝き絶える午後の滅びに
互いに明るくする霊たち翳は奪われざわめきたつ聞こえぬままに歌
冬枯野玉蜀黍たち実をつけたままに赤くて音「誰もいない」
外套に包まれていま濡れてゆく枯れ河は草の匂いに満ちるだろう春


テーマ:短歌 - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/12/25(木) 08:34:19|
  2. 交感神経日記
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みぞれ雪降る日のために その3

いまはどこにも薔薇の花はない.でも、かすかな香りが残っている
そしてぼくは耳を澄ませる.この場所のこの空間の音を聞こうとして…そして声を聞こうとしている.音は風の音だった.それは遠い梢を吹きすぎる風の音だった.その音に、声が混じった.歌
そう、そのひとの歌だった
窓からは横顔だけが見えている.窓の硝子は空と流れる雲を映していたから、そのひとの姿は淡く見えるだけだった
歌には、ピアノの音が混じっている.少女としては低い声の歌
どの国の言葉だろう.英語でもなくドイツ語でもない

でも…それは寒い歌なのだろうか.冬の歌…永遠におわらない冬の

ぼくが立ち止まって…ほとんど立ちすくむようにして耳を傾けていると、窓が開いた

「ドアは開いているわ」
と、そのひとは言った

ドアは、黒と灰色の木で作られた重いドアだった.奇妙な獣をモチーフにした真鍮のドアの取っ手.それは何故か冷えていない.それを掴む手の…無数の手のぬくもりを残しているように


廊下は奥に続いている.その先の窓からは白い光が射しこんで廊下を照らしている.廊下の両側には絵.暗さのなかで肖像が横顔を見せている.だれがこの肖像を描いたのだろう.室内にいて、そこで窓に顔を向けている女性の横顔.不意に水の音がした.そして「きゃあ」という女性の華やかな声が
ぼくは左のホールに急いだ

水が床に広がり光っている.黄水仙が散らばっている.硝子の花瓶は割れてはいなかった.そのひとは水を拭いていた.その姿は、どこか猫のようにまるく、そしてしなやかに動いていた

ぼくは,壁におかれたモップをみつけ、ゆかの水を拭きとってゆく

「ありがとう…」と、そのひとはふりむかずに言った
ぼくは重い硝子の花瓶を抱えて、バスルームに歩く

広いバスルームには白い琺瑯のバスタブが置かれ、青銅の湯沸かしがそのかたわらにそびえている.バスルームの床はよく乾いている.洗面台の蛇口をひねると、空気の吹きだすくぐもった音ののちに錆び色の水が流れ、やがてその水は澄み、ぼくはその水で花瓶をみたし、ホールへ歩いた

テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/12/24(水) 07:27:19|
  2. 交感神経日記
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メタリックレインの世界の一部

あなたのように深爪をしているひとなんて信用できないわ

と橄欖を口に含んで女性は笑った
男は、不意をつかれたように顔を上げ、その表情をかすかに陰らせた
女性はゆっくりピックをコースターの上に置き、続けた.

それにあなたは酔わないのね.酔って崩れたりしない…何故

それは…

男の言葉はそこで途絶えた

そう、あのルミネセンスの夜、黒い雨は光っていた.青い光.地上からすべての光が失われて、ただ雨と水だけが光っていた.青く…ぼくたちの内側の水も光っていた

だから、あの闇のなかでひとのかたちが幽鬼のようにうすあおく光を帯び、ぼくはそのひとの黒い雨に濡れた顔をぬぐった.その顔はほの白く、そして…

あの夜のあと、もう爪も髪も伸びなかった.奇妙に清潔な、遅延してくる死.ぼくたちは死の中にあり、死を生きていた.その未来に奪われて、いま過去であるはずのぼくの爪も伸びない

時は流れない.いつもその場にとどまって…あるのは過去だけなのに、ぼくは反復のなかに留まっている…あの夜、大気に析出して沈み始めた灰と雨

あの、チェレンコフ光の夜
破滅はそこにあり、しかも遅れてきた
すべての生あるものは呪われたかに見え、残酷なことにその反復に取りこまれてしまった.反復は永遠を生み、ぼくたちはそこをさまよう.救いは、いまはない.境界は閉じてしまい、明日はこない


………

メタリックレインの世界は、こんな世界ですw

テーマ:短歌 - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/12/22(月) 10:42:38|
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Metalic rain その3

ロウゼンジカモフラージュ(lozenge comouflage )のなかのモーヴ(mauve
灰色のなかの青
拡散
揺れてゆくことの

ぼくの鏡面にぼくは吸われて
ステンレスの磨かれた面やわらかな鏡.力をこめられた指のかたちに歪んで
無限後退としての翳、草たち、置き忘れられた夏

身体であるということは、ぼくたちが変移そのものであることだから、置き換わりである水の球体
水の球体のなかの蛍光する経路…触れている点と点とをつないで
霧箱のように…隔絶して、その喪われである軌跡
過去の再現される時間のふたたび水の流れることのない水路の、その水
その水に、いくつもの雲を映して


刺いくつもの刺に戯れて花冠ざわめき触れる指先である薔薇
髪の毛は乱れて編まれ枯れ草にいつも探していた花の青

凍りつき透過する光に花はふるえ声もなく過ぎるいくつもの空
裂けることのない閉ざしでもあるユリの白さその内側の花の真紅は

青い花腐食してゆく銀崩れてゆく氷河たちの夏雲の十字架

テーマ:短歌 - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/12/20(土) 05:09:12|
  2. 交感神経日記
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翅よ翅よ 黒揚羽 その1

予兆の記憶、という言葉に論理矛盾あるいは概念矛盾はないのだろうか
いまわたしは雨の予兆を感じている日のことを再構成している.それは子供の頃住んでいた家の窓辺.机の前にわたしはいて窓のガラスを見つめていた.窓の外にはシオンが群生して風に揺れていた

草たち

細く長く伸びた茎のさきの、糸の花の白であること
その花たちの脇の木の板で作られたフェンス.暗い緑色で塗られて…それはあり、それはない.というのは、ある嵐の日にそれは倒れ…もともと朽ちかけていたのだろう…修復されないまま失われたからだった

その板は、どこに運び去られたのだろう.燃やされたのだろうか.どこかの空き地で焔と、熱気を陽炎のように上げて過去のいつかの透明な夕暮に

その夕暮も、その熱気に揺らめいていた大気もそこにあるのではないだろうか.永遠の現在として
書きとめられたものとして
でも、そこに人の姿はなかった…もちろんわたしの姿も.わたしは少年であったはずなのだが

暗い褐色のビールが、いまテーブルの上でこまかな泡をたてている.わたしはその泡のはじけてゆく音に耳を澄ませているのだけれど、その音は聞こえない
時計を見た.わたしは黒いコートを手に店を出ようとしていた…そのとき,そのひとが来た




初夏だった

わたしは高原にいた.おおきな丘であるために、ほとんど平地にも思える丘は、いくつかの深い峪を持っていた.北の風景の光は明るく、光は拡散して靄のようでもあった




テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/12/19(金) 04:42:31|
  2. ダークファンタジー
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みぞれ雪降る日のために その2

門の扉は濡れている…と感じられるほど冷えていた.風はなく、大気は重く沈んでいる.でも庭の樹木は揺れている.彫像の天使の上に枝を垂れているイチイは、ゆっくり弧を描くように揺れていたから、初冬の木洩れ陽は、その斑の灰色の明暗をうつろわせてゆく
たかい空から雲の陰の流れてゆく野原を見れば、そのようにみえるのだろうか

庭の草は色あせてみえていた.…葉は細くなって、その先を緑から黄色にして
光は這うように低く、蒼白に、あるいは墨色を帯びているように思えた.まだ真昼をすこし過ぎたばかりだったけれど、それは色彩を奪ってゆく光のようにも思え…その光のなかに天使の彫像がある

ぼくはその天使の彫像が好きだった.うつむき、そして目を閉じて…あるいはうすくひらいて…それは、この先の建物にいるひとに似てもいたから

ぼくはあしおとをたてずに静かに歩いてゆく.庭の旧式の黒い車の上にも落ち葉は散っている
春、そのうえに桃の花が散っていた.黒い車の屋根は深い水のさざなみすらない表面のようだったから、その桃の花のひとひらひとひらは水に浮かぶようだった…その春はいま、冬になろうとしている

窓がある.建物も旧い建物だったからその色は庭の樹木や彫像たちと解けあうように古び、その明暗のトーンをひとしくしていたから、窓は、空を映している.それは切りとられた空のように見えた
でも、そのなかにあのひとがいる
祖母のものだという服にその身をつつんで

匂い…そのひとにはかすかに不思議な匂いがある

その建物の前にはローズゲートがある.いま、薔薇の花はない.蔓のようにローズゲートの青銅に捲きついて、その刺は鋭く,先端は水に溶けてゆく血のようにほの赤かった

  1. 2008/12/15(月) 02:53:23|
  2. ダークファンタジー
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みぞれ雪降る日のために その1

秋の色彩は金色を超え、空は青い.落ち葉たちは重さなきもののように舞い、静かに沈んでゆく
花水木の葉は銀色を帯びる.その銀色の奥の紅は艶やか、といってもよかった.そして香気…秋の大気に含まれるその香気
それは貴腐の葡萄の香気、高い枝にとり残された林檎の赤い実の奥で澄み、透明になってゆく漿液のあるかなきかの匂い
そして、落ち葉たちは雨にぬれ、ゆるやかにその色を暗くしてゆく.やがて冬にはそれは黒と灰色に変わる.でも、冬のその凍える大気のなかで落ち葉たちは匂いたつのだ

「冬、その黒と灰色をぼくは愛していたのかもしれない」

その公園は古い市街に続き、そこには大きな病院と旧い大学の建物がある.ぼくは人気のない舗道をあるいてゆく.硬いパンが茶色の紙袋のなかで音をたてる.そして野葡萄のワインが揺れている.そして林檎.1冊の本…そう「冬、その黒と灰色をぼくは愛していたのかもしれない」とその本ははじまるのだった.そして銀のペーパーナイフ

ぼくは年上の女性の家にあるいてゆく.ぼくよりもひとつ年上の…16才の…少女という年齢ではすでになく、病気のために家からでることの少ないひとりの女性であり、やはり少女とも呼べる存在

その家には広い庭があった.周囲を高い塀とフェンスにかこまれ、幾つもの大理石の彫像を持ち…どこか墓地のような、やはり廃園と呼ぶのがふさわしいようなその庭には、小さな亭のようなものがある.白い建物にぼくはまだ入ったことがない

門に、ぼくはたどりついた.一台の橄欖色の自転車が、斜めに鋳鉄の黒く錆びたフェンスにたてかけられている.それが少女の自転車であることに、ぼくの胸はたちさわぐ.痛みとよろこびとともに

蔦の枯葉のまといつく門は軋みながらひらいた


テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/12/14(日) 07:14:26|
  2. ダークファンタジー
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プロティスタンティズムの陥穽あるいはエチカなき文明としてのアメリカ

プロティスタンティズムの可能性としての、あるいは顕在化してしまった陥穽のひとつが、自己肯定を生みだしてしまう、ということで、その甚だしい場合には、キリスト教のおそらくは根底になければならない「罪認識」を欠いてしまったりさえします

「罪」という言葉を失ったキリスト教は、もはやキリスト教ではありません.説明をはぶきますが、人格神崇拝が偶像崇拝に等しいのと同じように

宗教はしばしば思考停止のベクトルを含みますが、同時に宗教的思考は、いつも完成には至らないという意味で要求としての無限を、いいかえれば常に回答にいたらない…主体を推移させてやまない思考に至る無限を…思考に誠実であろうとすれば…運動のなかにあり…やむことのない運動という意味でも無限、を含んでいて、これを翻せば、「神を理解した」と思うことは思考の死、もしくは一種の傲慢なのでしょう.
ぼくにはいま「信仰」はなく、いいかえれば信仰の名を借りた判断停止に回避しないことを誠実とも思うので、やすらうことと、やすらいえないことのあいだを往復するほかはないのですが、ぼくたちにむかいあうものとしての神は、つねに無限を要求してやまない.
そのような境界をもたない、あるいは概念がつねに推移流動してゆく思考において、回答あるいは肯定はつねに得られない.飛躍すればその肯定が得られないことにも「罪認識」は相互包摂のかたちで含まれてもいるのですが

文化がアイテムに、あるいはコンテンツに細分され消費されてゆくとき…くりかえし生まれだされないとき…それは体系としての文化を喪失してゆく過程である、とするならば、その文化なき文明は衰退崩壊してゆきます.文化は美意識としての倫理を含むはずですから、あたりまえのことですがエチカなき文明は頽廃を避けられないでしょう


いま、アメリカという文化なき文明が自壊と同時の自己再生を、そのプロセスをはじめているのならばよいのですが…


行路社「ホワイトヘッドと文明論」 四章 伊藤重行さん 冒頭

…六月のボストンは美しい.だがその美しさに比して、アメリカのおぞましさのみが目に付く旅でもあった.…ロスアンジェルス(わたしの造語ではロスト・アンジェルス)にも美しさはなかった.アメリカの凋落ははやいと感じた」

「この日いつか滅びん」とか「メネメネテケルウパルシン」を伊藤さんは感じてもいらっしゃったのかも

テーマ:物書きのひとりごと - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/12/12(金) 07:29:50|
  2. 交感神経日記
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予告w

「みぞれ雪降る日のために」と「翅よ翅よ 黒い揚羽」をはじめます

基本設定ができれば、あと行き先はペン(というかキーボード)に聞いてくれ、という感じです
皆既食がキーワードかな.あと感覚と認識の関係についても考えながらすすめてゆきたいと思うのでした

あと、耽美がしばしば貪欲になってしまうのがこれまでの幻想小説のイケナイところ.貪欲は美学に反しますもん

耽美はね、節度の限界への無限の追求であって、ほとんど潔癖な倫理でもあるべきなのだ.すくなくとも「美」を名乗る以上…

乞 ご期待

テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/12/11(木) 06:56:53|
  2. ダークファンタジー
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重力 その20 渇愛

これで重力100首
次はメタリックレインだ♪

考えることって、階層を多層化して深くしてゆく行為だから、反復であり、同時に反復の軌跡を構造化して差異を生んでゆくことなんです.もちろんその差異の基底層を主体と呼ぼうとすれば呼べるけれど、それにはあまり意味がない.

「大理石の牧神」に
…そうよ、わたしたちはとても注意深く歩かなければならないのだわ、この脆い地表を踏み破って、いつもわたしたちの足の下にひろがっている深溝に陥ちてゆかないために」
という言葉がありましたね


運命の裂け間のいくつもの裏切りは裏切りをかさねて逃れられぬ罪そして罪より、逃れることの錯誤は愚かさにみちて踊る影絵人形の薄い手と足をもつぼくの髪につられて白い象たちは色を淡くする冬の空をわたり河はあさくあさくなって海へ、砂の海へ倒れること互いの腕のうちに裏切り誰への鉄の腕青銅の足は絡みあい軋む骨の領域は超えられずにでも眠るつかのまのやがてくる死の、雲のむこうの陽のつめたい光に、いま求めあう力の限りにこの渇愛



どこにもあなたはいないだれもぼくを覚えない音もなく朽ちてゆくこの都市
かさねあういくつもの翳いまともに死者たちとあゆむこの街
遠い光あたたかさなく離れて道に冬の陽の凍り尽くす朝
倒れ伏す草たちの翳は墨色羽交いのうちに聞く河の声
雨の夏草のいきれ満ち求めあう指と唇腕と胸の狂おしく渇愛

テーマ:短歌 - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/12/06(土) 07:37:13|
  2. 交感神経日記
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水のあやなみ Ⅱの33

水の音とぼくたちの眠るような呼吸が広い空間にひろがり、そしていくつもの音の断片にまじりあってゆく.でも断片となっても、その音は互いに減衰しあわないようだった.音の粒子、音のモナド

「信仰を拒むことによって神に近づくのよ」
ゆっくり水を足で泳ぐように動かしていた女性がいった
「きみの言葉を…パラフレーズしてみようか」
とぼくは笑った

ぼくは上体を水からあげ、胸の前に女性のあたまを抱えて支えるようにしている.濡れた髪、そして水にひろがって揺れる髪
いつ、髪を伸ばしたのだろう
いくすじかの白い髪は、いまは無かった
濡れた髪からは、なつかしい匂い…おさない獣の匂いがする
ぼくは目を閉じ頬を女性の髪におしあてる
そう…
雪…雪
降っていた雪
大気から析出するようにあらわれて、沈む雪
音は微かだった
車の屋根に触れて、雪のたてる音に耳を澄ませて…雪は触れ、微かに硬質の音を残して溶けてゆく.それは消えてゆくものの残響だったから、それが雪の音だった


「そうか…救われてはいけないのか」
「ちがうわ…たぶん」
「神の律法は死者にはおよばない」
「わたしたちは、死と無によって言葉に還元される…それは神に還元されるということじゃないかしら」
「それが救い?」
「そのときそれはもう」女性はつづけた
「もうそれは、救いですらないわ」

テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/12/03(水) 07:31:23|
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水のあやなみ Ⅱの32

「水の中で、震わせている魚たちの揺らぎが、弾ける弦のように感じられて…あんなにも遠く離れていたのに…大気が水とわたしを隔ててもいたのに」
「橋があった.低い橋で、水面に影を落していた.でも水面の光が橋の裏側をあかるくしていた.裏側のオレンジ色が水面に映っていた」
「浅い川だったけれど、澄んでいて、深い緑色をしていた.こどもたち…中学生くらいのおとこのことおんなのこが泳いでいた.髪を黒く濡らして…肌は日焼けしていなかった.白いカワウソのように水に戯れていたわ」
「罪からは遠い日々」
「でも罪の日々はやってくるのよ」
と女性は言った.水を掬い、ふたたびぼくの髪にそそいで…笑った
「でも、過去が救う…ということはないかな」
「どういうこと?」

そう、夏の、そしてその終わりの眺めだった.夏の終わり.わずかに、けれどもたしかに日差しはその角度を変えて、夕暮がすこしだけ近くなって、草たちが疲れていた.夏の終わり

いま湯舟のなかで女性は身体をぼくの腕にゆだね、顔を真上にむけている

ぼくの掌は女性の背を支えていた.感触は水をはさむことなく、それでもどこか乾いた感触ではない.記憶…この感触の記憶
ぼくは極くわずかに、さざなみめくような…ざわめきよりずっとかすかにこまかく震えているような感触…あたたかさとともに

「過去のかげりない記憶が、そのいまを救う…頽廃から救うというようなことはないだろうか」
「それは誰が…誰に対して救われるのかしら…その罪は、誰に対しての罪?」
女性は横顔を見せたまま、つぶやくように言った.でもそれはぼくに向けられた問いかけだった

室内を満たす光は、あかるさをましたようだった.あるいは空気そのものがうちがわに烈しい光をはらみ、そこからもれだしてくるかのような…影はうばわれて

…神の律法は死者にはおよばない

「そういったのはあなたよ」
いつしかぼくはむねに女性の背中を抱いていたから、女性はぼくを下から見上げるようだった
ひとりの女性に内包された女の子がそこにいて、この世界の不思議に好奇心の目をかがやかせている

そうぼくは思う

水の流れる音が、静かな室内に続いている

テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/12/02(火) 08:30:19|
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