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あやしく意味不明のダークファンタジー&SF。 一応健全(?)

水のあやなみ Ⅱ その35

…秩序は?

どこかでそう問いかける声を、どこかで聞いた気がする


揺れ動く揺れ動きを規定し、動態をその秩序に従わせるが、推移を押しとどめる力はない

神の無力と同じように

でも、その無力な神は…なにかを、すべてが自己に回収される不気味さから、果てしない不気味さから…空虚な、光も闇も無く、空間ですらないものに吊られている不気味さであり、受け入れ難さからぼくたちを解き放つことが…ただひとり…できるのかもしれない.その無力な神は
それは…それがそうだとしたら…それは何故なのか

胸のまえに背をあてている女性が…その背はやわらかくなり…そして硬くなる.緊張と弛緩のあいだを往き来するように、ゆっくり揺れているように…眠いのだろうか

「眠い?」
とぼくは女性に問いかけた

「ぼくたちは水のなかで眠ることはできないから…」
「できるわ」
「…え」
「………」
無言のまま、女性はあたたかな水にからだを…そしてゆっくり頭を沈めてゆく
なにかが、ぼくを怯えさせた
揺れるあたたかな水にひかりはさざなみして揺れ、女性の横顔をほの青くしている.女性は閉じていた目をひらいた
長い睫毛の先には小さな気泡が光っている.ぼくも、ゆっくりからだを沈めてゆく

水の中は、碧だった.そう…アクアマリンの色の、その色は青ではなく、かすかに碧も帯びているから.かすかに、紗のような綾のような光の模様が見えて、それは水の表面の光の波立ちではなく、水そのものの歪みを映しているように思えた
その模様には記憶がある

ぼくはさらに身体を深く沈めて女性と顔をむきあわせる.むしろ空気のなかにいるときよりもあざやかに、女性の顔が見えて、でも、ぼくたちはいま水の中で言葉を喪っているのだった

すべての、言葉を
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  1. 2009/01/30(金) 17:55:39|
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メタリックレイン その11

内側をなだれゆく雨光散る空虚をつつむ胸にふたり見あげている空
せめぎあう酷さでもある抱擁に流砂軋む都市にキャラメルの匂い
傾いてゆくふたりの背黎明の光ひびわれ剥がれてゆく道に
支えられることもない草たちそこに置かれている夏終焉の後
くきやかに陰は刻まれ灰色の眠り崩れてゆく冬の光


烈しく空腹のため、もはや餓狼状態です(ふだんはほとんど菜食なのに…抑圧していた野性が反乱を起している) 硬い肉を噛みちぎって食べたい…がうがうw

テーマ:短歌 - ジャンル:小説・文学

  1. 2009/01/29(木) 10:04:28|
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みぞれ雪降る日のために その7

「裂け目は、埋まることはない.飛び越えることもできない.流れゆく水もない.その谷を蝶の群がすぎてゆく.やがて霧は、その真昼を覆う…閉じられてゆく何冊もの本.燃やされてゆく何冊ものノート」


光は柔らかかった.微かに、それとはわからないほどに、青を…銅の錆びた緑青色を帯びた金色の光が廊下を満たしている.廊下は暖かい.窓が下まであるから、温室のようで…

そのとき、廊下の前をあるいてゆくそのひとの膝がゆっくり崩れた

ゆきこさんが腕をつつむようにまわして、そのひとの背を支え、「眠い?」と尋ねた
そのひとは肯いた

廊下に置かれた藤編みの長椅子にふたりは座った.そのひとの目は、眠りからさめたばかりのように…うつろというよりも焦点をもとめてさまようようで、そのひとが16歳という年齢には思えないほど老い、疲れていた

そのひとのくちびるが…ねむい…と言っているように動いた.声は聞こえなかったけれど
そして、首がゆっくり傾き、そのひとのあたまは雪子さんの肩にもたれた.雪子さんはそのひとの頭を、そして髪を抱えるようにしてぼくを見、微笑みをうかべ、そしてその微笑みを消した.雪子さんの瞳が、翳るように深く暗くなったのをぼくは見ていたのだが


嗜眠のように、不意の眠りは、そのひとを襲うらしかった.夏の日、雲の翳が不意に野を覆うように

かすかに、そのひとの寝息がきこえている

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  1. 2009/01/25(日) 07:52:38|
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メタリックレイン その10

「地球が静止する日」見てきました♪

意外な収穫…というかアメリカからこういう映画が出てくるようになったか…

あと、「地球が静止する日」はパラフレーズした「サクリファイス」です.優劣はないとおもう.もう祈っている場合じゃない、というメッセージはむしろ鮮明




苦くなる麦たちの藁陽をあびて残る早緑をぼくは忌むいま
引き裂かれ引きちぎられてゆく草を音もなく埋め眠る雪の日
影絵のように過ぎてゆく列車に乗って夢のない眠り駅などはなく
水の風むすぶ白露穂に散るとき刺す内側の肉の暗い虹
刺し違えてたがいにそそぎ溶けあえば血はあたたかにいま冬の雨

テーマ:短歌 - ジャンル:小説・文学

  1. 2009/01/23(金) 08:36:22|
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みぞれ雪降る日のために その6

その”黒い本”は3冊が存在するという
でも、そのすべてが同じ内容ではない…とも言う
そのひとの黒い本が、ぼくの黒い本と同じ…かどうかさえわからない


ゆきこさんと、そのひとは手をつないでいる.ゆきこさんの手は蒼白なまでに白く、そのひとの手はやわらかな肌色をしている.薔薇色…淡い…といってもよいような

ふたりに落ちかかる光は、高い庭の、無剪定のポプラのためにやわらかく散乱してふたりの輪郭を曖昧なものにしている.光はふたりを包むようにしながら…なにかを…浸食している

なにかを?なにを?

そのひとの上体は、ゆきこさんに依りかかるように揺れている.もしかすると、目を閉じて歩いているのかもしれない
あるいは、眠りに墜ちようとしているのかもしれない

廊下の左側はすべて硝子で、廊下は板張りに変わっていた.艶やかな木の廊下に、わずかに空の青である光をうつして

その青には、ぼくのこころを沈ませるなにかがあった.そのとき
ぼくは顔をあげた.ゆきこさんが肩越しにふりむくように、ぼくをみつめて微笑んでいる.いつもの
かすかに憂いのあるほほえみで、そのとき
にぎりあうそのひとの手に力がこもったのをぼくは、見た

ゆっくりと、黄変したポプラの葉が落ちてゆく.ふいに風が起こり、その葉は流れ視野から喪われた.遠く、どこかの家から時計が鳴る音が聞こえてくる.音も、流れるのだろうか

”黒い本”の一節をぼくは思いだす



「漂遊しているのはどちらなのだろう.雨は過ぎた.いくつもの水たまりを残して.水たまりは空を映していた.青である空を.
落ち葉がひとつ水たまりに浮かび流れてゆく.その映す空に雲も流れてゆく.わたしもまた、この推移し流れゆく世界を流れてゆく.ひとりで…ひとりのほかなく.だから埋めようとしてはいけないのだ.裂け目は…」

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  1. 2009/01/23(金) 08:27:20|
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Graveworm



よいかも♪

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  1. 2009/01/22(木) 19:02:27|
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Metalic rain その9

その7は異界をさまよっておりまして…ファイル修復中
さまよっている間に変容していたらおもしろいけど

ゆるやかに変移する事象のなかにあって…たとえば「わたしはわたしである」という命題と「わたしはわたしではない」という命題が繋辞として矛盾しない条件とは、時間性、歴史性の有無なのです
が…同時に、そこに補完される文言が要求されます.脚注のように
それは補完を要求する思考でもあります

飛躍しますが、想念は空隙に流れ込むのです.あるいは存在は断裂のあいだにその場所を見出すといってもよい

いまではなく、けれどもやがて、満たされるものとしての空虚
あるいは、空虚を保持することの意味


乾くことの高み雲の翳傷痕の脇より滴る水と血は澄み
死の峪に夕陽反照しあかるくも貌ふいに仰ぐみるものなく
声のみは響くビル群アスファルトに幾つもの空ひかる雨の後
蝶の群のうちつつむ黒喪の服より離れ昇りゆく青なき空
安息のなくあゆむ冬舗道には雨をふくむ春来ることのなく

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  1. 2009/01/21(水) 11:11:48|
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  1. 2009/01/21(水) 11:10:56|
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シグマリオンⅢのよいものを譲って頂き

持ち歩きは、これを使うことに

というのは、ハンドヘルド前提の機種のため、電車内でもテキスト入力がしやすいのです。さほど軽量ではないけれど小型ですし。また、酷使するため、ジョイント部の耐久性が不安な機種は選べませんでした

また、イーモバイル前提で持ち歩きの機種を選択中です

本当はNECからシグマリオンの後継機が出れば理想だったのですが

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  1. 2009/01/20(火) 17:18:44|
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Rammstein











  1. 2009/01/17(土) 23:21:23|
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林檎を待ちながら

イー・モバイルという通信会社が高速
ここは変化をもとめて通信会社もかえてみようかと&居住環境も移動することがありそうなのでやはり机に置いても使いやすい大きさのノートパソコンがあってもよさそうに思えてきました

で、モバイルノートはそれとは別に…ということに
結局、選択は迷いの森のなか

こうしてみるとシグマちゃんはいまでも名機&よいデザイン
初期化したら直っちゃったのですが、この状態がいつまで続くかわかりません

次期戦闘機の選択を進めなくちゃです

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  1. 2009/01/16(金) 02:37:38|
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林檎を

  1. 2009/01/16(金) 02:28:20|
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Metalic Rain その8

夕暮がやわらかになる…いまから…切り離されてもう寒くはない
雪を待つ雲灰色の春を抱えて小さな鳥たちの空に口笛
乾いた風枯草色に細くなる髪の匂いに夏の日の麦
青銅の響き触れあう枝たち折れていくたびも折れて
いくつもの光立つ冬金色は緑にひずみ翼は真白く

互いにあなたであるぼくたちは身体の重さを抱え触れているいくつもの風いくつもの光いくつもの翳から透きとおることもできなくそしてやがて喪われあういまをもちつつ道をあるき樹木たちのそこにあることにあり続けることを忘れて倒れることもできないままにあるく犬のように低く陰は這うみもとに近づきたどりつけない宿命をかかえながら…でも歌う。悲歌ではなく…あなたのあなたへの賛歌

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  1. 2009/01/15(木) 10:38:41|
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どうしよう…

エンデバーのNa01 意外に大きく、NECのモバイルブックも同じような大きさ
うーん

いっそ、typePもありかもしれません

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  1. 2009/01/14(水) 17:15:56|
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Theatre of Tragedy

不思議な雰囲気
ノルウェイのゴシックメタル





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  1. 2009/01/13(火) 17:59:32|
  2. 交感神経日記
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なにがなんでもエプソン

というわけではないけれど、シグマリオンⅢの後継機の選択に入りました

たぶんこれ

http://shop.epson.jp/na01mini/

起動はエプソンマシンの例にもれず俊敏ということでHDDモデルでは最速

重いのはご愛敬かも

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  1. 2009/01/08(木) 17:13:05|
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Metalic Rain その6

雪を見に行くことを思っていて、寒いけれども2月にはすでに春の気配もあるのですよね
うーん.初冬の雪もよかったけど

うーん
水滴型のラブラドライトに閉ざされた青と灰色の光は、氷もしくは雪を閉ざした水の感じがします
石英の光って、ちょっとあたたかかも、というか冷たさが足らないかな
でも、より水に近い透明感でもあるし

うーん

浅草橋にはたくさん鉱物のビーズを扱っているお店があってたのしいですね.銀の金具もたくさんあるし




晴朗の空に澄みゆく指先の髪に触れつつ眠るその背
凍る光歪む水滴のイヤリング濡れゆく耳に響くその歌
手袋の黒に包まれ骨のさらに細く凍る雲暗い、その街
15才の夏の痛み冬ロゼッタの葉の紫は深む、その罪
樅たちの道にわななく雪に迷い唇に息を奪う、その声

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  1. 2009/01/07(水) 08:15:29|
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ふたつのソラリス映画

最近のものに含まれている幾つかの重大な問いかけが、あまり認められていないのはちょっと残念な気もします

すくなくとも、こちらの思考を刺激してやまないのは新しいソラリスのほうなのです

主体…シミュラークル…回帰…罪…子殺し…取りこまれ…ロゴスからの再記述

などなど
いくつかの複雑な寓意を、さりげなくもりこんでもいて

さらにいえば、タルコフスキーが父に向かうとすれば、新しいソラリスは、子と犠牲に向かう

それはサム・シェパードの「埋められた子供」のテーマに通底しますね


ただ、映画としては新しいほう、主演の女優さんがワイルドで男性的で唖然としてしまった…というのが偽らざる心境なんですよねー

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  1. 2009/01/06(火) 21:13:47|
  2. 交感神経日記
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みぞれ雪降る日のために

そのひとのあとをついて、長い廊下を歩いてゆく
食堂は、吹きぬけの、どこか実験室のような雰囲気のある部屋…部屋と言えない印象なのは南と西のすべてが硝子張りになっているからだろう.ただ、改修の跡が残っている
1箇所.ステンドグラスがある.薔薇だった.紫と青の薔薇…薔薇ではないのかもしれない…でも14歳だったわたしには薔薇に見えたのだが

いくつか硝子の器具で組まれた実験装置のようなものがある.昇華抽出機のようなもの.キップの装置.そして前々世紀のもののような、震災前に輸入されたもののような巨大な顕微鏡と天体望遠鏡

見上げるほど巨大な顕微鏡は真鍮色の砲金製で、歳月にくすんだ光沢を鈍くはなっていて、同じ素材の望遠鏡のレンズは藍色に光っている

直径30cmほどの硝子の筒には水がみたされ、数匹の小さな透明のエビと水草が入っている

かすかに音をたてて、ゆきこさんが来た.そのひとの家庭教師でもあるというゆきこさんは、ぼくの若い叔母でもあるのだが、この家で暮らしているのだ.ほとんど黒に見える緑のビロードの吹くを着ている.カフスのレースは白.ゆきこさんの長い髪はまとめあげられているけれど、重たげなほどゆたかだった.でもそのひとの髪は、日本人形の女児ように短い

いつもこの部屋には気配があった

テーブルには1冊の黒い本が置かれている.ぼくの鞄の中にあるのと同じだという黒い本が
そのなかにこんな断章があることをぼくは思いだす


「夜、洗い流されてゆく夜.その澄んだ黒い水には、倒れた柳がまとわりつかせていた気泡がその柳のままのかたちに流れてゆく.黒の中をガラスに残された気泡のように、星のように光って.柳はとりのこされ水に揺れ震え…叫びを待つ…でも」

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  1. 2009/01/04(日) 08:39:46|
  2. ダークファンタジー
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翅よ翅よ 黒揚羽 その2

その光のまばゆさにわたしは、目を細めてもいて、そのように見上げる丘の上の林の樹木はまばらだった.風は吹いていなかったことを覚えている.わたしは捕虫網を手にしていたけれど、その網は揺れることがなかったから

捕虫網…わたしは標本を作ったことはない.捕らえることはしたけれど.でもつかのま蝶を眺め、そして放す.解き放たれた蝶が、青い空にのぼってゆくのを見るのがとても好きだったから

なかでも、キチョウ…Eurema hecabeの、角度によっては緑を帯びる黄色が好きだった

ただ、空の青が淡くて、雲が絹のように漂い移ってゆくとき 蝶はゆらめきながらその空に無限に墜ちてゆくように思えて、わたしも重力の支えを喪い、空に吸われてゆくようにも思えたのだった.そう、飛翔とは落ちてゆくことにも似ている.真昼どこまでも墜ちてゆく蝶たち

そう、そこには風は吹いていなかった.その峪のなかはいつも、風が吹きぬけてゆくことはない
ときに全くの無風ですらあったのである.揺らがない草…鳥たちの声だけが奇妙に近く響いて、すべてが静止したような時間…いつまでも静止してしまうような、真昼の真夏

わたしは立ち止まっていた.峪の草は茂り、あさく水は流れきらめいていたから
その土地の夏は短く、草の緑もやわらかに明るいまま秋をむかえる
若いまま、あるいは幼いままに老いてゆく子供たちに似て

その峪の上に別荘があった.上…というのは正確な表現ではないかもしれない
峪はゆるやかな斜面となって丘に続いていたから、そのなかほどの上に近い場所の白樺と樅の林の中にその別荘はあった
窓の多く、その面積も広い温室のような建物.壁は殆ど白といってよい淡い緑だった

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  1. 2009/01/03(土) 02:52:56|
  2. ダークファンタジー
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みぞれ雪降る日のために その4

黄水仙は、黒く光る床に散らばっていた.そのいくつかは折れしだかれて、そのためにむしろ強く香るそれを、ぼくたちは床からひろいあげ硝子の花瓶に刺し入れ戻してゆく.数は意外に多くて、もとのように花瓶に入れ納めるのは難儀だったから、そのあいだぼくたちはその水仙たちの香りに、酔ったようになっていたのかもしれない

その人にはなぜか饒舌の気配というものがあって、でも…なにもぼくに話したわけでもないのだ.
窓から射しこむ光は透明で、しかも拡散してもいることに気づき、ぼくは外に視線を向けた.
窓の硝子は平面ではなく、古い硝子瓶のように歪んでいたから、外の風景は陽炎の先にあるように揺れていた…それは揺れることによってむしろ永遠のなかに凍りつくようにも思えて…

「…すべては歪む歪みの中にあり、拒むことによって球形化する面の唯一つの点によって…やわらかく…触れる (唯一性及び可塑性の項を参照)」
いまバッグの中にある黒い本にはそのようにあった

「なにをみているの?」
かたわらにその人は立っている.いつものように足音も立てずにぼくの傍に来ていた
「窓のむこうの風景…」
「あかるいわ…でも草が枯れはじめている」
「冬は明るい…何故だろう」
「闇がその深さを喪うからよ」
窓の外を見つめたまま、そのひとは言った
「それは?」
「まばゆさが、見えるものを見えなくする…それが夏」

ぼくはしばらく、その人の言葉について考えていたけれど、そのひとは窓にあゆみ、窓を開け放った

外の空気が部屋に流れ込み、入り混じるそれを、ぼくの肌が感じている.湿ったあたたかさと、乾いた冷たさと…不思議なことに、部屋のなかの大気のほうが冷えていたのだろうか
冷えて乾いて、真空に近くて、でも香りが濃い.それはそのひとの匂いでもあった.匂い…匂い

「パンの匂いね」と、そのひとは言った「ユスラウメのジャムがあるわ.それにミントのジャムも…食べましょうか」

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  1. 2009/01/02(金) 12:32:25|
  2. ダークファンタジー
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