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あやしく意味不明のダークファンタジー&SF。 一応健全(?)

遠い光 Tその2

罪を負う苦痛と歓喜とわれとともに堕ちろ真空の光なき空
雨にぬれ芽吹くことのない種子の緑真夏の川は街に流れ
逃れゆくことないままに立ち尽くして雲黒い空みちてゆく雨
遅れてゆく光蔑むようにたちのぼる陽炎の真夏ぼくは目を閉じ
ゆびさきから糸硝子の針いつまでもぼくとあなたを繋ぐ痛みに

葛覆う水辺の墓に跪き祈る言葉をぼくは持たずに
風なきままゆれることもまたない水に沈みゆくとき息は泡になって
うすあかき襞つつむ水まろみゆきひかりは暗くこぼれゆくまで
おなじうたをくりかえす朝雨をまち廃市の駅にくる列車なく
黒土より突き上がる草につらぬかれて歩き続ける倒れられずに



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テーマ:短歌 - ジャンル:小説・文学

  1. 2009/08/18(火) 06:35:11|
  2. 交感神経日記
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1

水のあやなみ Ⅱの37

包みをひらくと、内側は白いパラフィン紙に包まれていた
石鹸だった
滑らかで硬い感触のパラフィン紙をひらいてゆくと香りが周囲にひろがりはじめた.淡く、そして濃く
「…桜の匂い?」
「これはアーモンドだわ」
「きみはなぜそんなことまで」
と、ぼくは笑った
「記憶にあるもの」
「記憶?」
「憤怒を観照せよ…といってこの石鹸をわたしに渡したのはあなたよ…これと同じ種類の石鹸を」
「ちょっと待って」
とぼくは言った
「そう言おうとしたのは確かだし、多分夢の中でそう言ったかもしれないが…口に出したことはない」
「それもわかっているわ」
と女性は笑った「でも…」
女性の眼がぼくを離れ、わずかに下を向き、その光を強くした
「わたしたちの記憶はいま、その時が現在であったときよりもずっと鮮明で、細密に現前できている。過去と未来からも干渉波がたちあがり、その質量を大きくする。これは繰り返された現在なのだわ」
「幾たびも読み込まれた本のように…ということ?」
「ええ…そして」
女性は続けた
「読むたびに、その姿を変える本のように」
「それは物語じゃないね」
と、ぼくは笑った
女性が言った
「ええ…わたしたちの生は、いつだって物語などじゃなかったわ」
ぼくは静かに女性の背に頬を押し当てた。匂いのしない水の感覚。背はすこし冷えていた。遠くからアーモンドの匂いが漂ってくる。細かな波のように



テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

  1. 2009/08/06(木) 07:34:47|
  2. ダークファンタジー
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

「山水図」部分

海は浅かった
立ち上がれば、足先は砂に触れるだろう。水は澄んで、すこし冷たかった
翳が、ゆっくり過ぎってゆく
浅い水深でも、揺れる波に光は散乱をくりかえし、重なって強く明るい部分を揺らしている。額からゴーグルをおろして水中に顔をつけると、鱚の若魚らしい群れが揺れている。鱚は透明な浅黄に見えていた。木洩れ日…そう木洩れ日のように光の明暗が砂の海底に揺れている
身体に貼りついていた砂が、ようやく剥がれ落ちてゆく。粉雪のように…ひどくゆっくりと
気づく
鈍い震動が聞こえている
水の中に。そして過ぎてゆく翳
水から顔を上げ、ゴーグルを外すと白い塔が水中から突きだしているのが見えた
大きな発電用の風車群。その純白が眩しい
顔を上げ、直ぐ近くの白い塔に泳ぎよる。土台のコンクリートには鉄の足場が5段、海面の上に見えている。足場は鉄の棒を曲げて作られて、赤黒く錆びていた
土台のコンクリートにはフジツボがこびりつき、その枯死したような白を腐食のように広げている
それでも、その形状の鋭さに触れれば、ぼくの皮膚を刻み、血は流れるだろう
藻が明るい碧に揺れている
足場を掴むと、陽に灼かれて熱かった
水を離れ、不意に重くなる自分の身体に、その重さの感覚にどこか、笑いたい気分になるのを不思議に思いながら、あのひとの身体の重さ…を思い出す
ぼくは再び、身体を持ち上げてゆく。風力発電塔の土台には、人が横たわれるだけの広さはあった
手のひらでそのコンクリートの熱さを確かめてから、ぼくはゆっくり横になった
背中に、コンクリートの熱が心地よい
遠く、遠く昔に、もうひとつのぼくの身体が横たわって、寒さと抗っているそれが、いまのぼくを芯から…奥深くから冷えさせている
誰もいなかった。この世界にはもう…記憶も、記憶にのこる人たちも全て死に絶えて、ひとり、ぼくはここに居る。身体を、そしてその感覚をもつ幽鬼として、いま永遠の業罰の中にいる。そう思うことが唯一、正しいのかもしれなかった

テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

  1. 2009/08/01(土) 12:16:20|
  2. ダークファンタジー
  3. | トラックバック:0
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