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あやしく意味不明のダークファンタジー&SF。 一応健全(?)

水のあやなみ Ⅱの44


いくつもの記憶が、同時に、重なり合うようにして甦り、いま自分が手を包んでいる女性の、目を閉じた顔に重なってゆく

記憶…かつてそこにあった現在

雪の中の車で、眠った記憶。雪はときに烈しく、ときに穏やかに白樺と唐松の林のあいだを流れていた。そして室内の記憶。明るい秋の日の、あるいは5月の雨の記憶。それはそこにあり、なにひとつ失われてはいない

一度でもこの世界にあらわれたこと。そのことは失われない

女性の眠りが深くなったのだろう。穏やかな寝息が聞こえている。その寝息に自分の呼吸をあわせていると、自分にも睡魔がおとずれて来そうだった

…眠ってはいけない

このすべてが消える

それは直感でもあったし、確信でもあった。この穏やかで親密なふたりだけの世界は、眠ったときにあとかたもなく、消える

そして消えたあとには…

不意に、わかったことがある。自分は、この女性の祈るイメージに取り込まれた、この女性の記憶に残る自分であったものの姿に過ぎないのだと。だとすれば、かつてもうひとつの世界で生きていた自分は?その自分といまここにこうしている自分との関係は?なにかが、ふたつの自分の間を環流して繋ぎあっている。女性の眠るその横顔は、おだやかでやすらいでいた。その手をつつむ感触のあたたかさも

意識が遠のき、眠りが灰色のあたたかな煙のように足下から這い上がってくる。手が何かに濡れ始めている。自分は閉じかけた目をひらき、それを見つめようとする 

それは血だった
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  1. 2015/04/12(日) 08:37:51|
  2. 水のあやなみ Ⅱ
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