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あやしく意味不明のダークファンタジー&SF。 一応健全(?)

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雨と雲と虹そして人形 その4話の5

その少年の視線は、若い女性にも向けられた

少年は首をかしげ、すこし不思議そうに微笑むと、アイスクリームの上から、スプーンで赤いチェリーをすくって口に含み、そして本の頁に目をおとした
その本は灰色の表紙の夭折した詩人の詩集だった

そう、あの青は、ここではないどこかにある世界の青だった.この世界の雑駁と混沌をのがれて
その世界の深い青はひそやかにやさしく、そして寂しかった
それは神の淋しさで、そのさびしさが神をうごかしているのかもしれない
でも、ぼくたちはこのからだを持ち、その感覚はいのちの感覚でもあった.ぼくの前に、静かに膳が置かれた.箸…そして小さな銀のスプーン
そのものは味のない乳白色の寒天.餡の甘さ.その甘さを感覚しているぼくの視覚のとらえているもの漆のつややかな暗色に塗られたテーブル
その飴色が水面のように映しているさまざまな風景と光

ぼくは、開かれた店の入り口から通りの向こうを見る.広い通りを車が行き交い、向こう側にもあるくひとたちがいる.陽炎のたつような明るさも、どこか淋しかった.それは初夏の淋しさでもある
過ごしてきた初夏の日々は互いに重なり、ひとつになってゆこうとする.そして遠い高原
その風景の記憶はいまも鮮やかだった
「アイスクリームが溶けるわよ」
若い女性が静かにいった.その声には遠い記憶があった
ぼくに呼びかけるその声の聞こえるとき、ぼくはぼくであることができた
声…そして言葉
たぶん…そしてだから、ぼくに呼びかけるとき、その女性もその女性であるのだろう.声でも、視線でもよいのかもしれない.無数の感覚が響きあい、この世界はこの世界にたちあがってゆくとしたら、この世界はいのちの世界でもあった…でも



カードが机の上に置かれていることに気づいた

жизнь Бессмертность 

いのち…そして不滅


明るいグレーの背広を着た痩身の青年がぼくを遠く眺めるようにして、言った

「たぶん、存在はこのような失われのなかにあって、その失われが唯一の永遠だとすれば、その失われ…喪失の中にこそ存在は滅びない.喪失からたちあがり、絶え間無く展開してゆくこともまた、受け継がれてゆくこととしての命なのかもしれないのだから
昭和11年の初夏、ぼくはここにいたよ
そしてこの世界こそがいのちそのものなのだ」

少年の声がした
「ハリストス死より復活し、 死をもって死を滅し、 墓にある者に生命を賜えり」
少年はぼくに言った
「今年の復活大祭は初夏にあるのかな…」

そう…冬の寒さを残す季節ではない、その夜に鐘は鳴り響くだろう.回廊に、ぼくはもどらなければいけなかった
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テーマ:ショートショート - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/04/17(木) 04:37:58|
  2. ダークファンタジー
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1
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