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あやしく意味不明のダークファンタジー&SF。 一応健全(?)

雨と虹と雲そして人形 その4話の7

海…といっても高速道路を走り、長く奇妙な橋をわたった、都市に近い海だった.松林のなかのレストランでピクニックバスケットにサンドイッチや飲み物にフルーツを用意してもらい、それを手にぼくたちは海に向かった
タクシーを降り、海にむかってあるくぼくたちに、タクシーの運転手はいつまでもその白い手袋をした手を振っていた

砂浜は海に向かい背後には松林が低くひろがり、さらに背後の高層ビル群は靄の中に明るく霞んでいる。風はほとんど一定の強さで吹き続けている

遠く対岸が見える
「ビュージェット湾は、ちょうどこんな眺めかな」と痩身の青年がいった「晴れて風の強い日は意外に近くに見えるよ…いままでいた街でさえ蜃気楼のなかにあるようにみえる」
「蜃気楼のなかにいた、というのはよいわね」と女性はいった
「ぼくは陽炎のなかに立っていたことがある…」と、少年は言った「ビルとビルのあいだの道にひとはいなくてその春、舗道で溶けていた氷の大きな四角い塊は透明で、太陽の光にきらめいていた.ぼくは陽炎のなかで、陽炎と一緒になってゆれていた.なぜかなにかがひりひりとしてまぶしかったから、ぼくはその氷をなめた.舌の先で触れると、つめたくて水の味がした.その水の味のあたりまえなことにおどろいてしまった」

砂浜にはそれでも、ゆるやかな起伏があり、砂は乾き尽くしていたがところどころに青草もあった.ぼくたちはそこに腰をおろして遅い昼食をはじめた.ちぎれた雲が流れてゆく.手のとどきそうなところを.空の青は濃く、かすかに緑色をおびてもいる.風景のすべては失われのなかにある.その感覚は苦痛で、でもそれをいうなら生の感覚そのものが苦痛だった
サンドイッチは乾かないようにパラフィン紙でつつまれていた.ハムの塩の味に、ぼくはすこし驚いてもいる.オレンジジュースはまだ冷たくて、瓶は水滴を帯びていた

少年の手からサンドイッチが離れて、布のマットにゆっくり落ちた.少年のあたまがぼくの膝にいきおいよく傾き、おもわずささえると、かすかなうめきににた吐息とともに、少年は眠りに落ちていた.そのやわらかな髪からは、幼い獣の匂いがした





(4話の8に続きます)
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テーマ:ショートショート - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/04/21(月) 17:08:40|
  2. ダークファンタジー
  3. | トラックバック:0
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