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あやしく意味不明のダークファンタジー&SF。 一応健全(?)

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ピグマリオンシンドローム その11

店内はむしろ暗く、ケーキたちもこの時間は照明に照らされてはいないことが、むしろすずやかさを感じさせ清潔でもあった
都市はしばしば人工の光が陽光を混濁させる.その陰翳を含めて.それでも、その人工の光と高像の隙間に、なにかが生まれてゆく…ということもあるのだろう.ぼくたちの身体すら、光を遮り、そして反射する.それは静かな明るい泉におちた小さな石のつくりだす波紋の…いくたびにも折りたたまれてゆくくりかえしにも似ている.だとすれば光のなかに置かれた人形も、その空間に投げ込まれた石にもなるのか
人形もまた、光のうみだす領域を推移してゆく
人形と、植物の緑の光が織り交わすなにかを想起しようとするけれど、その人形はひとりの女性の姿に変わってゆこうとして…曖昧な形象のままにとどまる

陳列ケースから、不意にヴァニラが匂う…というのは錯覚かもしれなかった

店のなかは冷え、すこし湿度も高く感じられた.水辺の草のなかの早朝…霧ではなく靄でもない水の粒子の記憶が不意にやってくる
頬に触れ、髪を重くしてゆく水の粒子.析出する水の記憶…草の匂い

それは日時を喪った記憶でもある
初夏に介入してくる秋にも似ていた.秋は秋ばかりのものではない

いま、店の外を自転車が過ぎていった.自転車のタイヤの細いスポークがきらめく.光の一点に集中しようとする矢のように.

ぼくは玲子さんのリクエストであるゼリイ Der Wind von Mai を包んでもらいながら、硝子のケースに人差し指の先を触れさせる
硝子ケースの表面は冷えていた.指先に乾いて硬い.その先のケースのなかに、別の種類の黒いゼリーが置かれていた.5つ.繊い毛筆の字で「皐月闇」と書かれていた
黒…でも透明な黒だった.なかになにか小さく光るものがある.気泡のようなもの…気になったので
「それも5つ…」と、ぼくは指差した
少女のような店員はだまって肯いた.そして、どこか硬い動作でかがみこみ、その闇のように暗いゼリーをとりだす

ふとぼくは思う
…玲子さんの生む人形が、あれほどまでに死…を思わせるのは何故なのか


ここからは遠い、あの日の、そして別の日の五月の森のなかは、どこか水の底に似ていた.木洩れ陽は揺れさざめきながら明るい緑の下草に反射して、さらに反射は繰り返されて…きみを…あわい青と碧に染めていた

閉じられなければならない目が、あるいはあるのだろうか
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テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/05/20(火) 05:07:57|
  2. ダークファンタジー
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