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あやしく意味不明のダークファンタジー&SF。 一応健全(?)

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青い月

その街は、地下街の大規模な工事が始まっていた。
その深夜、皎々と人工の光が深く続く地下に満ちて、でも工事現場にいるはずの人の姿はどこにもなかった。

たしか、伯父の子がこの近くでバーをひらいていたはずだということを思い出して、つぎの角を右にまがった。

さすがに驚いたのは、その一帯が解体されはじめていて、そのバーもなかば削られて、カウンターが見えていた。
そのなかでシェーカーをふっているバーテンダーが伯父の子だった。

「たいへんなことになってますね」というと

…ええ
その若い男は
「工事現場のクレーンが倒れてきて、あやうくあっちにゆくところでした」と苦笑した

あっちとは、あの世のことだろう

…わたしは「なにかカクテルを」と言った

「今夜は満月だから、ブルームーンはいかがですか」
「うん、それで」

カウンターのすみに、少女のように若い女が、ひだりあしを揺らせながら、ドーナツを囓っていた。
目の前には大振りのグラスに入れられた、あわい琥珀色のカクテルを飲んでいた。それは微かに黄緑の蛍光を放っているように思えた

3杯目のブルームーンが、グラスの底のひとしずくになったとき、わたしはどこまで深いかわからない地下工事現場を覆う鉄板と鉄板のあいだにそれをそそいだ。

その透明で薄青い滴は、ゆっくりと揺れながらおちてゆき、やがて見えなくなった。

ふとふりむくと、カウンターの隅にいた若い女が、しどけなくわらいながら自分のカクテルを同じように、その裂け目にそそいだ。
彼女はかなり酔っているようだった。

不意に、なにか音がした。金属を打ち合わせるような、澄んだ音。
余韻はいつまでも消えずに、むしろ大きくなって続くようだった。そればかりではなく、すべての金属がその響きに共鳴をはじめ、ほとんど耳を聾するようになったとき、すべてが浮かび上がり、空の真上にある月に向かって奔った。

やがて、わたしたちという湿った水分は、青い雫となって月の表面に落ち乾いていった。
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  1. 2006/11/07(火) 03:37:25|
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