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あやしく意味不明のダークファンタジー&SF。 一応健全(?)

昭和9年9月20日

昭和のはじめのこんな日、わたしは夏枯れの道をあるいていたのです
帰らなければならない場所に向かって
でもその場所は、いつか立ち去らねばならない場所でした
疲労は汗のように身体にねばりついて、足取りを重くしてゆきます
鞄には白いノート.そこに書かれなければならない言葉の重さ

道はゆっくり登ってゆく坂道で、土は乾いています.土は細かな瓦礫と、真っ黒な乾いた粉土をを含んでいます
そう…雪はとけて、その微細な黒鉛のような結晶の核を残します
氷晶のなかにあるちいさな核としての、黒

雪の日…そう…雪の日は過ぎてゆき、そしてふたたび訪れるのでしょう
でも、それをみるぼくはいません

いま…風はなく…たぶん…もうこの世界のどこにもなく、限りなく細かくされた風が、高いざわめきを内に封じて、決して静かではないあの街をおもいださせるのです
かたわらを、少女の自転車が過ぎてゆきます
そう…少女は老いてゆくのです
南…そう…南には海があるのでしょうか
もうずいぶん長いあいだ、海の砂に横たわっていません.そして雲と、淡い青の空を見上げていません
和菓子のお店のうすくらがりで、硝子コップのなかの氷が崩れてゆく鈴のような音に…耳を傾けていません
乗りあい自動車が、かたわらを過ぎてゆきます.肺病のあの娘が、わたしに手をふりますから、わたしもかるく手をふりかえします.あの娘は東京に帰るのでしょう
夏のおわりですから

そしてわたしは、帽子をすこし上げて空を見上げるのです
でも、そらは近く、明るすぎて、もう…どこにも雲はなかったのでした
そして、倒れることのできないわたしはいま…道をあるいてゆくのです
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テーマ:物書きのひとりごと - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/09/20(土) 14:06:18|
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