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あやしく意味不明のダークファンタジー&SF。 一応健全(?)

水のあやなみ Ⅱ 24



奥にあるエレベーターのドアは硝子だった
筐体の周囲はマホガニーの赤.周辺の枠は金あるいは真鍮.古い建物の装飾を再現しているように思える

フロントからわたされた鍵は名刺ほどの大きさの金属の板だった.1箇所に不規則な欠刻があり、それが鍵の役目を果たしているようだ.数字も刻まれている.601 
それも古い字体だった

「ここはホテル?」とぼくは尋ねた
「そのようにも使えるけれど…レンタルルーム…というのかしらね.小さなオフィスほどの広さはあるわ」
「記憶はある気がする」
「あたりまえよ」
と女性は笑った
エレベーターが下がってきた.草の匂いがする

エレベーターの壁にもたれて、何故かとてもゆっくり上昇してゆくエレベーターの数字を眺めている.エレベーターからは、外の風景が見える.琥珀色の硝子のために、夕暮の風景のように見えている.でも、いまは真昼だ.真昼…真昼の死

その死、をぼくは見ることはなかった
「…その死を、ぼくは見なかった」
「わかっているわ」
と女性はぼくの顔を見た

言葉は繰り返され、回帰し、固まろうとしつつこぼれてゆく.事実が、限られたかたちで語られ蘇る.ぼく自身ではすでにないぼくに語ることばとして

繋がり、そして切り断たれる.無思考に流されて

父の死は突然だった
予期はしていたし、覚悟もしていたけれど、容態は急変して、その死の瞬間を見ることはできなかった

エレベーターが6階で停まった.通路というべきものはほとんどなく、非常口のドアをのぞけば、入り口はひとつだけだった
「オフィスという感じがするけど」とぼくは笑った

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テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/09/29(月) 03:55:08|
  2. ダークファンタジー
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