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あやしく意味不明のダークファンタジー&SF。 一応健全(?)

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水のあやなみ Ⅱの28

「ぼくたちの世界は…無数の項が積分を繰り返され、同時に微分されて構造が決定され流動してゆく世界で…」
「……」
女性は無言のまま、ぼくの背に胸を押し当てていた.そして肩を噛み、声をたてずに笑った
「あの日からあなたが消えた…あの世界から、突然」
「そう…そこで記憶は途絶えている.浅緑の水.潮騒…雨の記憶ののちに」
「途絶えた…そう突然、反応が消えたの.ひどい冗談のように」
「記憶はほとんど…こどもの時に溺れた記憶と重なって、分けられなくなってしまった」
コートは湿っていたのだろうか
その重さは袖に及んで、ぼくの動作を重くしていた.砂を足が踏んでいた.廃墟…コンクリートの表面のいくつもの雨のしみ
そのしみが文字のようで、ぼくはそこに意味を読み取ろうとしていた

背後からぼくを抱きしめている女性の手に力がこもった
いま、窓の外には都市のビルが、真昼の…光の散乱のためにどこか微かに濁った靄のひろがりのようで、そのさきにうすあおく山が見えている

…あ
おもわず声がもれた
…きみは?きみはどうしてここに?
「聞かないで…」
と女性は言った

「晴れた日の午後だった.わたしはあなたの家に行ったの.手紙と新聞がポストからあふれてこぼれていた…2階のベランダでは植物が乾いていた」

ぼくの目は、大きいバスタブをとらえていた.白の琺瑯…でもかすかに青磁色でもある.蛇口は真鍮の脚からたちあがり、口をひらいた獅子のかたちをしている.左右に一対.シャワーは燻された金色で、ヒマワリのようなかたちをしている

「わたしがいま、こうして抱きしめているのは誰なの…こうしているわたしは…わたしなの?」
「あの世界のぼくでもなく、あの世界のきみでもないとしても、このふたりは他者と他者として向かいあい、言葉を…そう…言葉をかわしているし…互いを感覚している…変移し移りゆくものとしてのお互いを」
「そう…思い出した…わたし、あたたかな水に浸かりたかったのだわ」

女性は腕をほどいてバスタブにあゆみ、蛇口のコックをひねった
水が泉からあふれるように流れ出した

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テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/11/05(水) 05:38:25|
  2. ダークファンタジー
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