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あやしく意味不明のダークファンタジー&SF。 一応健全(?)

水のあやなみ Ⅱの32

「水の中で、震わせている魚たちの揺らぎが、弾ける弦のように感じられて…あんなにも遠く離れていたのに…大気が水とわたしを隔ててもいたのに」
「橋があった.低い橋で、水面に影を落していた.でも水面の光が橋の裏側をあかるくしていた.裏側のオレンジ色が水面に映っていた」
「浅い川だったけれど、澄んでいて、深い緑色をしていた.こどもたち…中学生くらいのおとこのことおんなのこが泳いでいた.髪を黒く濡らして…肌は日焼けしていなかった.白いカワウソのように水に戯れていたわ」
「罪からは遠い日々」
「でも罪の日々はやってくるのよ」
と女性は言った.水を掬い、ふたたびぼくの髪にそそいで…笑った
「でも、過去が救う…ということはないかな」
「どういうこと?」

そう、夏の、そしてその終わりの眺めだった.夏の終わり.わずかに、けれどもたしかに日差しはその角度を変えて、夕暮がすこしだけ近くなって、草たちが疲れていた.夏の終わり

いま湯舟のなかで女性は身体をぼくの腕にゆだね、顔を真上にむけている

ぼくの掌は女性の背を支えていた.感触は水をはさむことなく、それでもどこか乾いた感触ではない.記憶…この感触の記憶
ぼくは極くわずかに、さざなみめくような…ざわめきよりずっとかすかにこまかく震えているような感触…あたたかさとともに

「過去のかげりない記憶が、そのいまを救う…頽廃から救うというようなことはないだろうか」
「それは誰が…誰に対して救われるのかしら…その罪は、誰に対しての罪?」
女性は横顔を見せたまま、つぶやくように言った.でもそれはぼくに向けられた問いかけだった

室内を満たす光は、あかるさをましたようだった.あるいは空気そのものがうちがわに烈しい光をはらみ、そこからもれだしてくるかのような…影はうばわれて

…神の律法は死者にはおよばない

「そういったのはあなたよ」
いつしかぼくはむねに女性の背中を抱いていたから、女性はぼくを下から見上げるようだった
ひとりの女性に内包された女の子がそこにいて、この世界の不思議に好奇心の目をかがやかせている

そうぼくは思う

水の流れる音が、静かな室内に続いている

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テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/12/02(火) 08:30:19|
  2. ダークファンタジー
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