MittlereBereich

あやしく意味不明のダークファンタジー&SF。 一応健全(?)

みぞれ雪降る日のために その3

いまはどこにも薔薇の花はない.でも、かすかな香りが残っている
そしてぼくは耳を澄ませる.この場所のこの空間の音を聞こうとして…そして声を聞こうとしている.音は風の音だった.それは遠い梢を吹きすぎる風の音だった.その音に、声が混じった.歌
そう、そのひとの歌だった
窓からは横顔だけが見えている.窓の硝子は空と流れる雲を映していたから、そのひとの姿は淡く見えるだけだった
歌には、ピアノの音が混じっている.少女としては低い声の歌
どの国の言葉だろう.英語でもなくドイツ語でもない

でも…それは寒い歌なのだろうか.冬の歌…永遠におわらない冬の

ぼくが立ち止まって…ほとんど立ちすくむようにして耳を傾けていると、窓が開いた

「ドアは開いているわ」
と、そのひとは言った

ドアは、黒と灰色の木で作られた重いドアだった.奇妙な獣をモチーフにした真鍮のドアの取っ手.それは何故か冷えていない.それを掴む手の…無数の手のぬくもりを残しているように


廊下は奥に続いている.その先の窓からは白い光が射しこんで廊下を照らしている.廊下の両側には絵.暗さのなかで肖像が横顔を見せている.だれがこの肖像を描いたのだろう.室内にいて、そこで窓に顔を向けている女性の横顔.不意に水の音がした.そして「きゃあ」という女性の華やかな声が
ぼくは左のホールに急いだ

水が床に広がり光っている.黄水仙が散らばっている.硝子の花瓶は割れてはいなかった.そのひとは水を拭いていた.その姿は、どこか猫のようにまるく、そしてしなやかに動いていた

ぼくは,壁におかれたモップをみつけ、ゆかの水を拭きとってゆく

「ありがとう…」と、そのひとはふりむかずに言った
ぼくは重い硝子の花瓶を抱えて、バスルームに歩く

広いバスルームには白い琺瑯のバスタブが置かれ、青銅の湯沸かしがそのかたわらにそびえている.バスルームの床はよく乾いている.洗面台の蛇口をひねると、空気の吹きだすくぐもった音ののちに錆び色の水が流れ、やがてその水は澄み、ぼくはその水で花瓶をみたし、ホールへ歩いた
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テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/12/24(水) 07:27:19|
  2. 交感神経日記
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1
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コメント

はじめまして

初めてコメントさせていただきます。
父にこのブログを教えてもらい、楽しみにしながら見ていますw
応援しています。
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  2. 2008/12/24(水) 18:16:42 |
  3. ミカ #-
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