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あやしく意味不明のダークファンタジー&SF。 一応健全(?)

みぞれ雪降る日のために その4

黄水仙は、黒く光る床に散らばっていた.そのいくつかは折れしだかれて、そのためにむしろ強く香るそれを、ぼくたちは床からひろいあげ硝子の花瓶に刺し入れ戻してゆく.数は意外に多くて、もとのように花瓶に入れ納めるのは難儀だったから、そのあいだぼくたちはその水仙たちの香りに、酔ったようになっていたのかもしれない

その人にはなぜか饒舌の気配というものがあって、でも…なにもぼくに話したわけでもないのだ.
窓から射しこむ光は透明で、しかも拡散してもいることに気づき、ぼくは外に視線を向けた.
窓の硝子は平面ではなく、古い硝子瓶のように歪んでいたから、外の風景は陽炎の先にあるように揺れていた…それは揺れることによってむしろ永遠のなかに凍りつくようにも思えて…

「…すべては歪む歪みの中にあり、拒むことによって球形化する面の唯一つの点によって…やわらかく…触れる (唯一性及び可塑性の項を参照)」
いまバッグの中にある黒い本にはそのようにあった

「なにをみているの?」
かたわらにその人は立っている.いつものように足音も立てずにぼくの傍に来ていた
「窓のむこうの風景…」
「あかるいわ…でも草が枯れはじめている」
「冬は明るい…何故だろう」
「闇がその深さを喪うからよ」
窓の外を見つめたまま、そのひとは言った
「それは?」
「まばゆさが、見えるものを見えなくする…それが夏」

ぼくはしばらく、その人の言葉について考えていたけれど、そのひとは窓にあゆみ、窓を開け放った

外の空気が部屋に流れ込み、入り混じるそれを、ぼくの肌が感じている.湿ったあたたかさと、乾いた冷たさと…不思議なことに、部屋のなかの大気のほうが冷えていたのだろうか
冷えて乾いて、真空に近くて、でも香りが濃い.それはそのひとの匂いでもあった.匂い…匂い

「パンの匂いね」と、そのひとは言った「ユスラウメのジャムがあるわ.それにミントのジャムも…食べましょうか」
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テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

  1. 2009/01/02(金) 12:32:25|
  2. ダークファンタジー
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