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あやしく意味不明のダークファンタジー&SF。 一応健全(?)

翅よ翅よ 黒揚羽 その2

その光のまばゆさにわたしは、目を細めてもいて、そのように見上げる丘の上の林の樹木はまばらだった.風は吹いていなかったことを覚えている.わたしは捕虫網を手にしていたけれど、その網は揺れることがなかったから

捕虫網…わたしは標本を作ったことはない.捕らえることはしたけれど.でもつかのま蝶を眺め、そして放す.解き放たれた蝶が、青い空にのぼってゆくのを見るのがとても好きだったから

なかでも、キチョウ…Eurema hecabeの、角度によっては緑を帯びる黄色が好きだった

ただ、空の青が淡くて、雲が絹のように漂い移ってゆくとき 蝶はゆらめきながらその空に無限に墜ちてゆくように思えて、わたしも重力の支えを喪い、空に吸われてゆくようにも思えたのだった.そう、飛翔とは落ちてゆくことにも似ている.真昼どこまでも墜ちてゆく蝶たち

そう、そこには風は吹いていなかった.その峪のなかはいつも、風が吹きぬけてゆくことはない
ときに全くの無風ですらあったのである.揺らがない草…鳥たちの声だけが奇妙に近く響いて、すべてが静止したような時間…いつまでも静止してしまうような、真昼の真夏

わたしは立ち止まっていた.峪の草は茂り、あさく水は流れきらめいていたから
その土地の夏は短く、草の緑もやわらかに明るいまま秋をむかえる
若いまま、あるいは幼いままに老いてゆく子供たちに似て

その峪の上に別荘があった.上…というのは正確な表現ではないかもしれない
峪はゆるやかな斜面となって丘に続いていたから、そのなかほどの上に近い場所の白樺と樅の林の中にその別荘はあった
窓の多く、その面積も広い温室のような建物.壁は殆ど白といってよい淡い緑だった
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テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

  1. 2009/01/03(土) 02:52:56|
  2. ダークファンタジー
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