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あやしく意味不明のダークファンタジー&SF。 一応健全(?)

みぞれ雪降る日のために その11

そのひとが呼吸している…ということが不思議に感じられるのは何故だろう.どこかに、もはや呼吸をしていないふたつの身体がある…ふたつなのだろうか…もうひとつ…あわせてみっつの水の中の身体
水を透過した光は翡翠色を帯び、身体を、そして顔をほの青く照らしだす.眼はうすくひらかれて
それを見たのはだれなのだろう


「生きてゆくということは、呼吸することを含み、その儚い身体性がぼくたちを虚無から救う.ぼくたちは生生流転のなかにあって、生によって開かれ広がり、そして滅びてゆく.ぼくたちは流離し流転する生のなかにあって…花咲く…因果も意図も無しに、この神なき世界で」

林のなかの沼は風にさざなみだち、その表面は空の色になって水の中はなにも見えなかった.風は冷えた.冷たさは奥深くとどくように感じられた
死の冷たさが、内側に氷の粒のように結晶してゆくように

祖父の手が汗ばみ、眉根はふかく皺寄っていた.祖父はぼくに、なにを見せようとしたのだろう

……

その日差しにみたされた広い廊下にいまぼくはいて、雪子さんとともにそのひとの呼吸を聴いている

そのひとの眠りは、さらに深くなってゆくようだった.呼吸とそして鼓動…鼓動という言葉にぼくは胸を衝かれた…眠りはさらに深くなってゆくようだった.ほとんど、死の深みにまで

雪子さんの表情が翳りから、張りつめた緊張、というべきものにかわってゆく
そのとき
声…が聞こえた

それが、そのひとの声だとは思えなかった
つぶやきの…低い少年のそして老人の声…言葉…でもどの国の言葉なのだろう

ぼくと雪子さんは顔をみあわせた
ぼくは尋ねた
「ラテン語?」
「ええ…」と雪子さんは肯いた
「典礼の」
「違うわ…詩…それも旧い」
「何故?このひとが?ラテン語の古い詩を」
「教えたのよ.わたしが…」
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テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

  1. 2009/03/25(水) 02:33:18|
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