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あやしく意味不明のダークファンタジー&SF。 一応健全(?)

「山水図」部分

海は浅かった
立ち上がれば、足先は砂に触れるだろう。水は澄んで、すこし冷たかった
翳が、ゆっくり過ぎってゆく
浅い水深でも、揺れる波に光は散乱をくりかえし、重なって強く明るい部分を揺らしている。額からゴーグルをおろして水中に顔をつけると、鱚の若魚らしい群れが揺れている。鱚は透明な浅黄に見えていた。木洩れ日…そう木洩れ日のように光の明暗が砂の海底に揺れている
身体に貼りついていた砂が、ようやく剥がれ落ちてゆく。粉雪のように…ひどくゆっくりと
気づく
鈍い震動が聞こえている
水の中に。そして過ぎてゆく翳
水から顔を上げ、ゴーグルを外すと白い塔が水中から突きだしているのが見えた
大きな発電用の風車群。その純白が眩しい
顔を上げ、直ぐ近くの白い塔に泳ぎよる。土台のコンクリートには鉄の足場が5段、海面の上に見えている。足場は鉄の棒を曲げて作られて、赤黒く錆びていた
土台のコンクリートにはフジツボがこびりつき、その枯死したような白を腐食のように広げている
それでも、その形状の鋭さに触れれば、ぼくの皮膚を刻み、血は流れるだろう
藻が明るい碧に揺れている
足場を掴むと、陽に灼かれて熱かった
水を離れ、不意に重くなる自分の身体に、その重さの感覚にどこか、笑いたい気分になるのを不思議に思いながら、あのひとの身体の重さ…を思い出す
ぼくは再び、身体を持ち上げてゆく。風力発電塔の土台には、人が横たわれるだけの広さはあった
手のひらでそのコンクリートの熱さを確かめてから、ぼくはゆっくり横になった
背中に、コンクリートの熱が心地よい
遠く、遠く昔に、もうひとつのぼくの身体が横たわって、寒さと抗っているそれが、いまのぼくを芯から…奥深くから冷えさせている
誰もいなかった。この世界にはもう…記憶も、記憶にのこる人たちも全て死に絶えて、ひとり、ぼくはここに居る。身体を、そしてその感覚をもつ幽鬼として、いま永遠の業罰の中にいる。そう思うことが唯一、正しいのかもしれなかった
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テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

  1. 2009/08/01(土) 12:16:20|
  2. ダークファンタジー
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