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あやしく意味不明のダークファンタジー&SF。 一応健全(?)

水のあやなみ Ⅱの37

包みをひらくと、内側は白いパラフィン紙に包まれていた
石鹸だった
滑らかで硬い感触のパラフィン紙をひらいてゆくと香りが周囲にひろがりはじめた.淡く、そして濃く
「…桜の匂い?」
「これはアーモンドだわ」
「きみはなぜそんなことまで」
と、ぼくは笑った
「記憶にあるもの」
「記憶?」
「憤怒を観照せよ…といってこの石鹸をわたしに渡したのはあなたよ…これと同じ種類の石鹸を」
「ちょっと待って」
とぼくは言った
「そう言おうとしたのは確かだし、多分夢の中でそう言ったかもしれないが…口に出したことはない」
「それもわかっているわ」
と女性は笑った「でも…」
女性の眼がぼくを離れ、わずかに下を向き、その光を強くした
「わたしたちの記憶はいま、その時が現在であったときよりもずっと鮮明で、細密に現前できている。過去と未来からも干渉波がたちあがり、その質量を大きくする。これは繰り返された現在なのだわ」
「幾たびも読み込まれた本のように…ということ?」
「ええ…そして」
女性は続けた
「読むたびに、その姿を変える本のように」
「それは物語じゃないね」
と、ぼくは笑った
女性が言った
「ええ…わたしたちの生は、いつだって物語などじゃなかったわ」
ぼくは静かに女性の背に頬を押し当てた。匂いのしない水の感覚。背はすこし冷えていた。遠くからアーモンドの匂いが漂ってくる。細かな波のように



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テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

  1. 2009/08/06(木) 07:34:47|
  2. ダークファンタジー
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