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あやしく意味不明のダークファンタジー&SF。 一応健全(?)

翔よ 翔よ その7

…どこに楠があるのだろう
と少年は思う

その樹脂の匂いが、いまはむせるように強くなっている葛のその季節はずれの花の香りと交じりあって…初夏…を感じさせている

音も無く変容と変態は進んでいるのだろう.繭は黄色みを帯びた真珠色だった
その硬質の…同時に脆くもあるような…聖体拝受のウエファーのような表皮あるいは殻の奥に、緑を帯びた光の微粒子群が、幾筋もの流れとなって渦巻き流動しているのが見えていた

繭は全体としてアゲハ類のそれに似ていた

微かに不安のようなものがあるとすれば、蝶の構造は、どこまでの巨大化にたえられるのだろうか…ということだった

蝶の最大のアレキサンドリア Ornithoptera alexandrae でさえ、開翅長は30cm程度なのだから
だから…変態ののちにこのように巨大な蝶たちは飛べるのだろうか

飛べない蝶…

少年はボトルに入っている水を飲んだ
水道は、まだ流れている.電気は流れなくなった.ガスも止まっている.文明も静かに眠ろうとしているのだった

少年はその部屋の、温室のようにひろい天窓を見上げ「…そうだ」
とつぶやいた



出口が必要だった.空にひらく出口が
少年はモップの柄を手に斜めにひらいている窓の硝子を割っていった

硝子はきらめきながらおちて音をたてた.それを終え、硝子の破片を片付けた正午すこしまえ、
羽化がはじまった

まず少女の繭から…色彩が現われた
喪服を思わせる黒と、ちりばめられた白に含まれる回折光の虹…それは深い緑だった

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テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/02/08(金) 02:06:11|
  2. ダークファンタジー
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