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あやしく意味不明のダークファンタジー&SF。 一応健全(?)

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ピグマリオンシンドローム その2

工房の女主人の眠りはいつものように深かった.目覚めても、どこか覚醒しきれないものを多く残してもいるようで、どこか眠りの続きを生きているようでもあった

浅い硝子の水盤にたたえられた水は、細い水草のためか緑を帯びて、あけはなたれた窓からふきこむ風にさざなみだち、光を揺らすのだ

…線形の文様であるはずの光と影の明暗は、干渉によるものなのだろうか、輪郭をくきやかにする斑点となって広がる.日差しの強いときなど、ほとんどまぶしいほどに

冷たい木洩れ陽のように…揺れながら…うすい水色の壁に、灰色に赤紫を交えた古いカーテンに、そしてロングソファーに横たわる女主人の投げ出された左のうでに白い光の斑紋として落ちて揺れる

…爬虫類が雨林の、あるいは乾いた林と草むらに潜むときの、しずかな、同時にすずやかな斑紋…すこし濁る緑に白
…白は眠りのいろであるのかもしれない
…そして同時に、肉体奥深くの傷痕の色でもあるのかもしれない

でも、女主人とはいうものの彼女は老いてはいない.まだ40歳になっていないのだから、ずいぶん若いといってよいのだ
ただ、世を捨てたようにして暮らしているから、どこか老女めいてもいるけれど
そして、あまり太陽にはあたらない生活をしているから、肌は白く若々しかった

ひとり娘がいた…そしてその娘の従姉の少女がひとり、その娘を世話をするように、あるいは共同生活者としていっしょに暮らしている.従姉の親は他界したが、非常に限られた範囲のひとびとのあいだで、評価の極めて高い画家だった

1冊の画集がある.その画家の絵は、その画集のために描かれたのだという.画集には、短い解説文、あるいは断想のようなものがついている.それは画家自身によるものではないことは、はっきりしていた
また…非常に限られた範囲のひとびとのあいだで、評価の極めて高い画家だった…というには理由がある
その画集が非売品であり、しかも50部にみたないものしかこの世に存在しない…から

でも、ぼくはその画集を少年の頃にみてしまったのだ.女性の髪の毛よりさらに細い線と、あわい階調…淡い色彩…でもその弱さでしかないはずのものから生み出されている表象はゆるぎなく強靭ですらあるものだった
描かれているのは、人と植物の風景である.あるいは交錯した平面に移る影のようなもの.そのなかに、少女らしい手と足の重なるように描かれた印象的な一枚がある
珍しくそれには…「人形」…という題が付いている

そしてなぜか、ぼくはつまり、その画家の晩年の、たったひとりの絵の弟子だったのだが

ぼくはシャツのポケットから紙片をとりだした
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テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/03/01(土) 21:11:19|
  2. ダークファンタジー
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