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あやしく意味不明のダークファンタジー&SF。 一応健全(?)

雨と雲と虹そして人形 その2話の2

少女の姿をしたフィギュアが小さく揺れている
バイクは首都高速道のゲートを通過する

冷たい歓喜にも似て、バイクのエンジンはその回転を高めてゆく
ぼくはある男の残した詩の一節を思いだす

「ぼくのそばにいて.それだけが防げるのだから
ぼくの黒い狂気が覚醒するのを.凶悪が覚醒するのを…きみだけが防げるのだから
ぼくの腕のなかにいて
ぼくの黒い憎悪がきみにむかって赤い口を開くのを…きみだけが防げるのだから
あの日、あの過去がぼくたちの未来を互いに奪いあい、でもどこまでも晴れていた空」

そう…晴れた真昼の空は狂気にどこか似ている
そしてぼくたちのように認識する意識の絶望は、この世の終わりまで続くだろう…そのひとつひとつの命のなかに、その命の担いとして…宿命として

都市は静かだった.そして寂しかった.ひとりはひとりのままにいてまばゆい光と夜の闇のなかにいる.そしていま、ぼくの駆っているバイクの高出力の自在感は、頚城を逃れた逸走の…浮遊感でもあった

そう…あの男の詩は次のように結ばれていた
「眠ろう.放浪者のように.
呪われた永遠の旅人のように
…もうどこにも、ぼくたちの場所はないのだから」

速度は100km/hを超えて、バイクの巻き起こす風が街のくぐもった音のすべてを消し、その遮断の中にいて、ぼくのこころは静かになってゆく

少女の姿をしたフィギュアも不思議な静止のなかにあった.少女のフィギュアは微笑み、そして両手をひろげている.そこにいけば、抱きとめてくれるように.そのフィギュアは、少女のような女性がぼくにくれたものだった.いまでは遠い記憶のなかのその女性の面影を、ぼくはいまなつかしむ

寂しい星たちのように、首都高速道路第三環状線にはバイクたちが集まってくる.黒や銀あるいは真珠色、あるいはクロームメタリックの鏡のようなカウリングをまとって.そしてこの夜誰かが死ぬ.それはぼくかもしれないし、そうではなくとも、ぼくによく似ただれかには違いなかった

流星たちの夜の、その限りない静けさ.ひそやかであることの深い歓喜
水銀灯がつらなり、その投げる白い光の作るぼくの影が、ぼくを追い越してゆく

ぼくは目を閉じる
そしてひらく
そこには少女の姿をしたフィギュアが小さく揺れている

速度表示は200km/hを超えてゆく







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テーマ:ショートショート - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/03/26(水) 01:37:53|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1
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